資産運用

マンションの価値を見直す(4)中古マンションの価格はどう決まるのか

マンションの価値を見直す(4)中古マンションの価格はどう決まるのか

前回まで、新築マンションの原価の仕組みや、販売価格の推移について見てきましたが、今回は、中古マンションの価格がどういう要因で決まっていくのかということについて考えてみたいと思います。

前回述べたように、新築マンションの価格水準については、土地価格や建築工事費などの原価の動向によって影響を受けるとともに、実際の分譲市場での販売動向や、購入者層の年収の動向によっても影響を受けます。そして、実際の個別住戸の価格については、こうした価格水準をベースとして、マンションの立地性、交通条件、住戸位置、専有部分の仕様、間取り、眺望・景観、共用部分の仕様や敷地の状況などをもとに、販売時の値付けが行われます。こうした値付けは、周辺地域における新築マンションの販売事例や販売状況を踏まえて、その事例と当該マンションの比較をもとに決められることが多いようです。つまり、新築マンションの価格は、大きくは、原価の動向と、周辺地域の販売事例との比較によって、決められるということができるでしょう。

これに対して、中古マンションの価格は、建てられた時の原価との関係性はほとんど失われ、周辺地域の中古マンションの販売事例との比較によって決められます。しかし、土地価格や建築工事費といった原価の動向とまったく無縁であるかというとそうではなく、ある程度の影響は受けるようです。それは、中古マンションの価格が、その時点において周辺地域で分譲されている新築マンションの価格の影響を受けるためです。

図1は、1999年~2009年の首都圏及び近畿圏の新築マンションの販売単価と中古マンションの売買単価の平均値の推移を示したものです。これを見ると、首都圏、近畿圏とも、中古マンション売買単価は、新築マンションの販売単価の動きに追随した値動きをしていることが分かります。すなわち、中古マンションの売買単価は、そのマンションの新築分譲時の分譲単価から経年的に減価していくのではなく、その時点での新築分譲マンションの販売単価の水準との比較において、市場で形成されるものと考えられます。また、新築販売単価の動きに比べて、中古マンション売買単価の動きは、比較的緩やかであることが見て取れます。

次に、図2は、首都圏及び近畿圏における各年の新築分譲マンション平均販売単価に対する中古マンション平均売買単価の比率の推移を示したものです。これを見ると、この比率は、新築分譲マンション平均販売単価が上昇するとやや上昇し、下落するとやや下落する傾向にあることが分かります。また、ここ数年の傾向としては、新築分譲マンション平均販売単価に対する中古マンション平均売買単価の比率は、首都圏ではほぼ60%前後、近畿圏ではほぼ55%前後の数字となっていることが分かります。

次に、築年数に応じた中古マンション売買単価と新築分譲マンション販売単価の関係について、見てみることにしましょう。築年数に応じた中古マンション売買価格のデータは極めて少ないのですが、東京カンテイプレスリリース2009年5月7日号のマンション価格インデックスによれば、2008年における竣工年別の中古マンションの平均売買単価は、表1の通りです。

次に、表1の竣工年別中古マンション売買平均単価の数字を用いて、2008年の首都圏および近畿圏の新築時分譲平均単価に対する、築年数による中古マンション売買単価の比率(これを「経年単価比率」と名付けます)をグラフに表したものが、図3です。

これを見ると、経年単価比率は、首都圏の方が近畿圏よりも相対的に、5~10%程度高くなっています。このことは、図2の新築分譲マンション平均販売単価に対する中古マンション平均売買単価の比率について、首都圏の方が近畿圏よりも概ね5%程度高かったこととも符合する傾向です。

また、築18年以上の中古マンションでは、経年単価比率は、首都圏、近畿圏とも、ほぼ横ばいに転じています。これは、購入者である一般エンドユーザーの心理として、ある程度築年数の経った築18~21年のマンションでは、築年数による価格の差を、それほど考慮しなくなるためであろうと推測されます。ただし、この傾向が築22年以上のどの範囲にまで有効かは、データがないため定かではありません。しかしながら、マンションの価格が、原価的には土地価格と建物価格の和であることから、経年によって、建物価格がある程度減価された後は、土地価格を主体として新築価格の一定割合で中古マンション価格が推移することは、十分に考えられることです。

博士(工学)、一級建築士、不動産鑑定士、明治大学理工学部特任教授。東京都生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、三井建設、シグマ開発研究所を経て、1997年に株式会社アークブレインを設立、現在に至る。共同ビル、マンション建替え、土地有効活用等のコンサルティングを専門とする。著書に、『建築企画のフロンティア』、『建築再生の進め方』(共著)、『世界で一番やさしい住宅[企画・マネー・法規]』(共著)など多数。

株式会社アークブレイン

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