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“一味違う”土地の暫定活用法

コロナ禍等による人びとのライフスタイルの変化などを背景に、土地貸し事業のメニューが加速度的に増えています。そこで、今回は「土地の暫定活用」という観点に着目し、最新事例として「貸し農園」「シェアモビリティ」「自動販売機」の3事業をご紹介します。

記事作成日:2023年9月11日
記事公開日:2024年3月31日
記事改訂日:2024年3月31日

突然ですが、「土地活用」と聞いてどんな方法を思い浮かべるでしょう? 多いのは賃貸住宅の経営、ロードサイド沿いなどの商業性の高い土地であればコンビニ等の事業者への賃貸、少ない投資額で暫定的な活用を望むならば駐車場等が一般的かと思います。
しかし近年、コロナ禍等による消費者ニーズの変化に伴い新事業の出店ニーズが増えており、オーナー様の「土地活用」の幅が広がっています。特に建築物を伴わない、あるいは建築物がある場合でも使用期間終了後の解体を前提とする「暫定活用」のメニューが増えています。今回は、当社がオーナー様に提案させていただいた“一味違った”暫定活用事例をご紹介します。

コロナ禍を経て、都市近郊では「貸し農園」が人気に

1つ目は、東京23区内の住宅街にあるA社様所有の更地です。当該地があるのは都市計画法で定められた13種類の用途地域の中で最も厳しい規制が設けられた第一種低層住居専用地域で、住宅以外で建てられるのは老人ホームや学校関係、保育所などと、用途が限定されています。

A社様の所有地は会社の運動場として利用していた土地で、後々売却や自社利用などを検討できるよう、駐車場として短期間活用したいとのご相談をいただきました。しかし調査・検討の結果、周囲にショッピングやレジャーなどの多くの人を呼び込む施設がない住宅街で、かつ300坪と敷地も広いため駐車場は収益性の見通しが低いことをお伝えしました。

一方、当社では、貸し農園事業者が事業拡大を検討していることに着目していました。旅行など従来のレジャーが制限されたコロナ禍において、屋外で密にならずに楽しめるアウトドアが流行したことが後押しとなり、ファミリー層やシニア層を中心に、近郊で手軽に農体験を行える「農レジャー」のニーズが高まりました。その結果、貸し農園は人口がある程度集積する都市近郊を中心に、コロナ禍前の約2倍のペースで出店を加速させています。

出店条件は1農園につき1,000㎡程度が目安。地目は農地(生産緑地、宅地化農地、市街化調整区域内農地)が中心ではあるものの、宅地や雑種地なども検討可能です。最も注目すべきは、畑の整地や運営、集客などはすべて事業者に任せることができる点です。また、土地の賃貸借期間も3~5年と時間貸し駐車場とほぼ同様であるため、暫定活用メニューの1つとして選択できます。

今回ご相談いただいたA社様の所有地も人口密集地にあり、近隣に農地がないため、十分に集客が見込めるということでご提案が可能でした。こうして当該地は貸し農園として無事にスタートを切り、A社様にも「周辺住民の方に喜んでもらえる土地活用ができた」とご満足いただくことができました。

「農レジャー」のニーズの高まりを受け、都市近郊を中心に出店が急増している貸し農園事業
「農レジャー」のニーズの高まりを受け、都市近郊を中心に出店が急増している貸し農園事業

シェアモビリティ事業で、狭小地の活用を実現

2つ目の事例として、B様が大田区の住宅地に所有されている更地(駅から徒歩15分程)の活用をご紹介します。狭小地のため建物を建てようとすると建築費が割高になってしまう土地でしたが、相続で受け継ぎ思い入れがあるため、B様は売却せずに初期投資を抑えられる土地活用を希望されていました。

当社はまずコインパーキングを検討しましたが、敷地形状の問題から断念。そうした問題もクリアするプランとして、電動自転車や電動キックボードに代表されるモビリティ(移動手段)をシェアする「シェアモビリティ事業」を行う事業者への土地貸しを提案し、ご採用いただきました。

シェアモビリティ事業は、電動自転車や電動キックボードを数台分配置するスペースがあれば検討可能です。数坪の土地や、賃貸アパートなどの空地スペースで賃料収入を得られる可能性があるため、土地活用の選択肢が広がります。1年程度という比較的短期間でも活用可能なケースが多く、近隣住民や入居者などの利便性向上につながるという副次的な効果も期待できるプランです。

人びとの健康意識の向上やコロナ禍におけるパーソナルな環境が確保できる移動手段の需要により事業を拡大しており、事業者の出店意欲も非常に高くなっています。

飲料水以外の自動販売機事業で利回り向上

3つ目は、同じく狭小地で活用できる「自動販売機事業」の事例をご紹介します。自動販売機事業といっても、近年は通常の飲料水だけではなく、フルーツをその場で搾ったジュースや、熱中症対策のための保冷剤など、さまざまな商品・サービスを取り扱う自動販売機が増えてきています。無人でも24時間販売が可能という自動販売機事業のメリットが、昨今の人件費高騰や人手不足、コロナ禍によるテイクアウト文化の拡大という時代背景とマッチしているのだと思われます。

C社様は所有している千代田区のオフィス街にある更地について、数年後の自社利用までの期間限定で土地活用を検討していました。当社が調査・検討した結果、駐車場事業のみの活用では期待する利回りに届かなかったため、敷地の一角にさらに冷凍食品対応型の自動販売機を3台設置するプランをご提案しました。

この自動販売機は、ラーメンやケーキなどの冷凍食品を販売しており、近年特に出店を加速させています。商品単価が数百円~1,000円以上と比較的高価であることから、土地の賃料収入も高い傾向にあります。また、すでに飲料の自動販売機を設置している場合でも、冷凍食品ならば競合しないため併設が可能です。

自動販売機事業での土地活用で必要となる面積は数坪程ですが、土地面積等によっては1坪あたりの賃料単価が駐車場事業と変わらないケースもあります。今回の事例でも空地部分を効果的に活用することで利回り向上に大きく寄与することができました。また、自動販売機事業単独での活用はもちろんのこと、駐車場事業やその他の土地活用プランと併用することで、土地全体を無駄なく効果的に活用できるのも大きなメリットです。

狭小地の活用に適した自動販売機事業。写真はフルーツを搾ったジュースを提供する自動販売機
狭小地の活用に適した自動販売機事業。写真はフルーツを搾ったジュースを提供する自動販売機

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レッツではさまざまな土地活用の方法をご紹介しています。ご興味がある方は、ぜひご相談ください。


三井不動産リアルティ株式会社
ソリューション事業本部

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