Pickup Archive

建物規模最大化だけではない“かしこい選択肢”「価値」を引き出す新築・建て替え検討術【第2回】

情報誌レッツプラザ2023年Summer号より引用

前回は、建物経営においては建物規模を最大にして収益を上げるだけでなく、利回りや手残り金額、自身のライフスタイルや周辺環境への影響、さらに相続対策や引き継ぐ方の気持ちなどの観点から総合的に検討したうえで建物の規模を考えることが大切であるとご紹介しました。では、建物規模最大化以外の有効な活用法にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、土地の「価値」を引き出すとともに、自身の考え方や希望に合わせた5つの活用法をご紹介します。

Case04 駅から距離のある住宅地

「賃貸戸建て」による差別化も

賃貸住宅というと「賃貸マンション」を一般的には想定されると思います。容積率めいっぱいに建物を建てようとすると、確かに選択肢としてあがるのはマンションです。しかし、最寄り駅から離れていて、ファミリー層の需要の高いエリアにおいては、「賃貸戸建て」という選択肢も考えられます。

C様が所有している土地は、東京近郊で近年整備された住宅地の一画です。最寄り駅から徒歩15分、ファミリー層に人気があり、周辺には多くの中高層マンションが建っています。C様はこの土地で賃貸物件の建築を検討したいものの、将来的な空室リスクについて不安を感じていらっしゃいました。ファミリー層に人気のエリアのため、2LDK・3LDKの需要が高いものの、すでにこの間取りのマンション住戸は周辺にたくさんあります。

そこで、C様が選択したのは賃貸戸建てを複数棟建築することでした。4階建ての鉄筋コンクリート造マンションを建築するという考えもありましたが、木造2階建ての戸建てを複数棟建て、同じ2LDK・3LDKでも周辺のマンションとの差別化を図りました。

4階建てマンションよりも全体での建物規模は小さいため、収益額は小さくなりますが、手残り金額としては十分な金額が見込めると考えたことと、投資額を抑えることによる利回りの向上、商品の差別化による空室リスクの減少を見込んでの判断です。また、将来的に子どもたちに1棟ずつ相続させたり、一部を売却して相続税の納税資金としたりできるなど、相続対策としても有効だと考えていらっしゃいました。

賃貸事業を行ううえで、「空室率」の想定も大事なポイントです。空室リスクを回避する手法の1つが周辺物件との「差別化」でしょう。特にC様の土地のような駅から距離があり、ファミリー層に人気のエリアにおいては、賃貸を希望するものの「戸建てに住みたい」と考える需要は一定数あります。

「ライフサイクルの中で、子どもが小学校から大人になるまでの一定期間は戸建てがいい」と考える方は少なくないでしょう。そのような方々にとって戸建て賃貸は魅力的な物件です。マンションに比べて長期的に借りてもらえる期待が大きく、テナント入れ替えリスクが少ないのもメリットです。さらに、エリアによってはマンションよりも賃料単価が高いケースもあります。

C様の土地は比較的広いため複数棟を建てましたが、土地の規模によっては、1戸~2戸の賃貸戸建てを建てるケースも十分に考えられます。また、敷地全体を賃貸戸建てにするのではなく、一部を駐車場等にして運用する選択肢もあるでしょう。

もちろん、空室リスク減少・差別化を図るという点において、戸建てだけが選択肢というわけではありません。マンションを建てて、1LDK~3LDK・4LDKなどの複数のプランを組み合わせたり、規模・投資額を抑えて低層マンションを建築したりするなどさまざまなパターンが考えられます。地域性や周辺の供給動向、そして期待する手残り金額を見極めたうえで判断することが大切です。

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