容積率最大化ばかりが最適解ではない
更地に賃貸物件を建てる、老朽化した賃貸物件を建て替える。いずれの場合も容積率を最大限まで使ってより床面積の大きな建物を建てるのが基本的な考え方ですが、ケースによっては別の選択肢も考えられます。そのポイントを見ていきましょう。
所有している土地に建設できる建物の規模の上限は、主にその土地ごとに定められている容積率と建ぺい率によって決まります(図表1)。
賃貸住宅で考えると、規模の大きな建物を建てて住戸の専有面積を増やすほど、期待される賃料収入は多くなります。賃貸物件の需要が高いエリアでは特に、容積率めいっぱいまで床面積を大きくして経営効率を高めようと考える方も多いでしょう。逆に、容積率の上限よりも小さい建物をつくることはもったいないと考えられがちです。
しかし、土地の特性(敷地形状・立地条件)やオーナー様の賃貸経営についての考え方などによっては、あえて建物を一定の規模に抑えるという選択肢もあります。そして、そのほうが土地の価値を引き出すことができた、あるいはオーナー様の希望を叶えられたといったケースもあるのです。
では、あえて建物を一定の規模に抑える選択肢を考えるのは、どういったケースでしょうか?
1つは「所有している土地の特性」によるものです。例えば、間口が狭い土地や不整形地においては、容積率の上限を目指して大きな建物を建築しようとすると建物の形状や構造が複雑となり、整形地に比べて建築費も後々の解体費も高額になる傾向があります。
そうした場合、たとえ容積を上限まで使わなかったとしても、シンプルな形状の建物にすることで、投資効率の観点から容積を上限まで使った場合よりも有効な土地活用ができることがあります。「収益」だけではなく、「利回り」や、費用・ローン返済額を控除した「手残り金額」(=事業性)に着目することも大切です。
また、周辺環境を考慮し、あえて建物を一定の規模に抑える選択をするオーナー様もいらっしゃいます。例えば、対象地が自宅に隣接している場合、階数の高い建物を建てると自宅の日照が確保できなくなる、単身者向けに特化した戸数の多い賃貸物件は周辺環境になじまないなど、自身のライフスタイルや地域性への配慮などが主な理由です。
前述の通り、床面積が大きいほど賃料収入は多くなりやすく、そこを追求するのが基本的な考え方でしょう。一方で、その建物の「事業性」や、「周辺環境・ライフスタイルへの影響」などを考慮し、有効活用の用途・規模を幅広く考えることも大切であると言えます。