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【レッツ資産承継セミナー レポート】早期着手がポイント“底借整理”対策法

情報誌レッツプラザ2024年Winter号より引用

2024年9月26日(木)、底地(貸地)と借地権の整理に関する資産承継セミナーを開催しました。第1部では本誌の「骨太“法務”塾」を執筆されている弁護士の江口正夫氏が日本の借地権の特殊性について、第2部では不動産コンサルタントの立花弘之氏が底借トラブルの解決策について解説。第3部ではレッツの担当者が底借整理の一手法である「等価交換」についてお話ししました。今回は、第1部と第2部の概要をご紹介します。

【第1部】日本の借地権は特殊⁉ 借地権の特徴と法的課題

【講演者】<br>江口・海谷・池田法律事務所<br>弁護士 江口正夫氏
【講演者】
江口・海谷・池田法律事務所
弁護士 江口正夫氏

世界標準からかけ離れた、日本の借地権の特殊性とは?

まず知っていただきたいのは、日本の借地権の特殊性です。本来、借地権は契約期間の満了と同時に消滅する。これが世界標準です。ところが、日本では契約が満了しても法律によって自動的に更新されるうえ、貸主が借地権の返還を受けるには立退料が必要になるのです(図表1)。

この特殊な借地権は、日本の借地借家法に定められた「正当事由制度」と「法定更新制度」という2つの制度によって形づくられています。「正当事由制度」とは、貸主側にその土地を利用する正当な事由がなければ、契約更新の拒絶を認めないというものです。正当な事由とは、その土地の底地を所有する貸主自らが使う必要性を指しますが、その判断には借主側の必要性も考慮されます。

基本的には余っている土地を貸すわけですから、必要性が高いのは借主側であることは明白で、貸主側の正当事由が100%認められることはありません。この正当事由の不足分を補完するために立退料が必要だと考えるわけです。

一方の「法定更新制度」は、契約更新に関する同意が契約終了までになされなかった場合、借地借家法に基づいてこれまでの契約内容・条件で契約が自動で更新されることを認めるものです。つまり、借主が解約を申し出るか、貸主が立ち退きを求めない限り、借地契約は半永久的に続いていくのです。こうした借主優位に対抗するように、契約時に借主が支払う「権利金」という仕組みも誕生してきました。

貸主と借主がもめる原因は、立退料を算定する計算式がないこと

立退料の金額は、貸主側・借主側双方の目的や利益の程度、借地権価格、借主が被る損害額などを考慮して判断されますが、実は立退料を算定する計算式はありません。このことが借地の明け渡しをめぐって貸主と借主がもめる大きな原因となっているのです。

当事者同士の話し合いがまとまらなければ調停・訴訟へと進んでいきますが、できれば争わず円満に手続きを進めたいところです。そのためには、普段からコミュニケーションをきちんととり、関係性を築いておくことが大切です。貸主・借主双方が相手の立場を理解し、立退料についての考え方を共有していれば、大きなトラブルにならずに済むでしょう。

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