竣工後の管理や承継を見据えて総合的な検討を
もう1つのケースは、「オーナー様の賃貸経営において重視するポイント」によるものです。規模の大きな建物を建てると事業費は高額となり、借り入れを伴う場合はその返済の負担も大きくなります。もちろん返済に支障がないように事業計画を立てるのが大前提ですが、リスクを小さくするために借り入れの額を極力抑えたいという考え方もあるでしょう。
また、多額の借入金を相続して次世代に負担をかけたくないと考える方も多いのではないでしょうか。例えば35年返済でローンを組み、自身が主体となって賃貸経営を行うのは10年程度と想定した場合、その後は子どもなどに借入金を含めて資産を引き継ぐことになります。このような場合にも、建物を一定の規模にして、借り入れの額を抑えるという選択があります。
そして、管理の手間を考慮してコンパクトな建物にしたいと考えるケースもあります。建物が大きくなれば日常的な管理をはじめ、建物や設備に不具合が生じた際の対応、計画的な修繕など、やるべきことも多くなりがちです。特に大きな建物を保有して賃貸経営をされてきたオーナー様の中には、管理の手間や負担を痛感し、建て替えの際は建物規模を縮小したいと望まれる方もいらっしゃいます。
なお、建物管理の方法は、自主管理だけでなく、サブリースや建物管理を外部業者に委託することも可能です。外部委託することで、建物規模にかかわらず管理手間を大幅に軽減することもできます。また、建物規模が小さかったとしても、将来相続をする予定のお子様などがそもそも自主管理はしたくないと考えているケースも少なくありません。このような場合にもサブリースなど外部委託は有効な手段でしょう。
このように、賃貸物件の建て替えや新築にあたっては、次世代に引き継ぐことも考慮に入れることが重要です。子や甥姪など引き継ぎたい相手が決まっている場合は、その方が「賃料収入の最大化を図りたい(=床面積を大きくし賃料収入を増やしたい)」と考えているのか、あるいは「維持管理にかかる手間や負担を最小限に抑えたい」と思っているのかなど、引き継ぐ相手の意思を確認し、それも考慮して検討したいところです。
繰り返しとはなりますが、賃貸物件の新築・建て替えを考えるうえで、いかに床面積を大きくして収益を最大化するかというのは重要な観点です。しかし、建物経営において考えるべきことは「収益」だけではありません。利回りや手残り金額、自身のライフスタイルや周辺環境への影響、さらに相続対策や引き継ぐ方の気持ちなどの観点から総合的に検討し、建物の規模を考えることが大切です。図表2に建築検討の2つの考え方と、検討する際のチェックポイントをまとめましたので参考にしてみてください。
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次回は、これまでに触れた考え方について具体的な事例をもとにご説明します。お楽しみに!
(第2回に続く)