まずは法定相続人を確認し、資産の棚卸しをする
代々受け継いできた土地、手塩にかけて経営してきた賃貸物件など、大切な不動産を自身の“想い”に沿って次世代に引き継ぎたいという不動産オーナーは少なくありません。そのためには承継
者の選定や話し合いなどに時間をかけ、しっかりとした対策を立てておく必要があります。
その対策を7つのステップに分けて、ご紹介します(図表3)。
1つ目は、法定相続人の確認です。法定相続人とは資産を相続する権利がある人で、遺言書などで希望を明らかにしていない場合は法定相続人が相続します。法定相続人は次ページの図表4の通りです。未婚あるいは配偶者と死別・離別して子どもも孫もいない場合は父母が相続人となります。いずれもいない場合は兄弟が相続人となり、亡くなった兄弟がいればその子どもが代襲相続します。
法定相続人がいない、あるいは法定相続人はいるがその人たちには資産を引き継ぎたくないという場合、慈善団体などへの資産承継を考える方もいらっしゃいます。
ただし、法定相続人がいる中でそれ以外の人に資産を引き継ごうとする場合、法定相続人の中には「遺留分」という一定の割合の相続財産を金銭で請求できる権利を持つ人がいる場合があることを理解しておきましょう。
次に行いたいのが、資産の棚卸しです。「Let’s Plaza 2020年1月号」でもご紹介しましたが、不動産は「収益性」はもちろん、中長期で収益を生み出せる「安定性」、売却がしやすい「流動性」に加え、「相続」の観点からも評価することが重要です。また、代々引き継いできた愛着のある不動産を優先的に残したいといった自身の〝想い〟にも向き合いましょう。
さらに、資産を受け取る人の“管理の手間”や“想い”などの観点も重要となります。収益性が低い、管理が煩雑、受け取った後に修繕等の多額な費用がかかるといった不動産は、受け取る側の経済的・精神的負担になってしまいます。まずは所有している資産を明らかにしたうえで、不動産に関しては収益性、安定性、流動性、相続の観点から評価し、どの不動産を引き継ぐかを検討しましょう。
次に、自身の資産を誰に引き継ぐかを考えます。法定相続人がいない場合は、親しい親族が有力な候補となるでしょう。あるいは、法定相続人がいてもそれ以外の人に承継したい場合もあると思います。例えば、いとこ一家が身の回りのことを手伝ってくれているので、いとこの子どもに資産を承継したいというケースなどが考えられます。自身の“想い”を引き継ぎ、大切な不動産を守ってくれる人は誰なのかをこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。
誰にどの不動産を引き継ぐかを決めたら、相手と話し合い、意思を確認します。まずは食事などに誘い、相手の状況を確認しつつ、時間をかけて関係を築いていくのが望ましいでしょう。そして、「そろそろ終活を始めようと思う」などと切り出し、引き継いでほしい資産やその理由、どのように資産を使ってほしいのかなど自身の〝想い〟を伝えることが大切です。特に、不動産経営を承継してほしい場合は一定の手間や負担がかかるものの、収益ややりがいが得られることなども説明するとよいでしょう。