土地資産家のための税務講座

住宅資金贈与の要件と相続時精算課税制度

両親、祖父母から住宅購入資金としての贈与があった場合、「住宅取得等資金の非課税制度」という贈与税の特例が適用でき、また、相続時に精算することを前提に生前贈与をしやすくする「相続時精算課税制度」も併用可能です。これらにより、贈与税の非課税枠が拡大するため相続対策としても有効な場合がありますが、適用時期や方法には注意が必要です。今回は、これら特例の概要と贈与をおこなう際の注意点をQ&A形式で確認していきましょう。

Q3 ご相談者 C様

住宅取得等資金の贈与税の特例を受けられる子供の範囲と建物の用途は?

父は母を若くして亡くしたため、その後再婚をしました。現在の母である後妻には連れ子がいましたが、父は再婚に際してその子と養子縁組をし、戸籍上は私の弟です。

今、私と弟の双方に相続税対策も兼ねて現金による贈与を考えてくれています。贈与を受ける立場として弟と話し合っている中で、住宅取得等資金の贈与税の特例が適用できるかどうか話題にあがりました。

私はすでに自宅があるため、投資用のマンションにこの特例の適用を考えています。弟はこれから父所有の土地に自宅を建築しようと考えていますが、養子にも適用はあるのでしょうか。また、自宅でなくても居住用のものであれば、適用は可能でしょうか。

Answer

養子は実子と同様の扱いになりますので適用されます。
また、投資用マンションは特例の適用外です。

〈解説〉

この特例の適用については、実子と養子で取り扱いの差はありません。民法において両者は全く同列の扱いになっているため、基本的には税法においても差異はありません。

ただし、相続税法においては、かつての行き過ぎた節税策封じのために、民法とは異なる規定を設けています。典型的な例として、相続税を計算する際の基礎控除額の算定方法があげられます。基礎控除額は定額の3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算されます。しかし、養子を実子と同じ扱いにすると、節税のために必要以上に養子を増やすことにより、基礎控除額を増大させることが可能です。また、生命保険金や退職金の非課税金額にも影響を与えることになります。

そのため、民法上、養子縁組自体は何人でも可能であるものの、相続税の計算では実子がいる場合は1人、いない場合は2人だけをその数にカウントすることにしています。

これらの規定はむしろ例外的な扱いとなっているもので、原則的な考え方は民法と同様、両者に差異は設けていないのです。従って、弟さんに対してもこの特例は適用されます。

次に、この特例の投資用マンションへの適用についてですが、結論としてはご自身のお住まいに対するものだけに限定されます。従って、すでに自宅をお持ちのご相談者C様に対しては、ご自宅を増改築する場合やご自宅を賃貸して新たなご自宅を取得する場合には適用が可能です。

なお、もしC様が現在のご自宅を建築・取得する際に、すでに現行のこの特例の適用を受けている場合には、すでに適用を受けた金額を控除した残額だけが非課税となりますので注意が必要です。

さらに、贈与を受ける方の条件として、①贈与を受けた日の属する年の1月1日において、20歳以上であること、②贈与を受けた日の属する年分の合計所得金額が2,000万円以下であることも必要です。

※本記事は2015年9月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

税理士。昭和27年生まれ。早稲田大学教育学部卒。税理士法人エーティーオー財産相談室代表社員。国税専門官として税務調査を10年強経験後アーンスト&ヤング会計事務所、タクトコンサルティングを経て独立。経験を生かした資産税のスペシャリストとして活躍中。著書に『相続に強い税理士になるための教科書』『相続財産は法人化で残しなさい』『円満な相続の本』など。

税理士法人ATO財産相談室

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