Case03 資産は都内の広い自宅のみ。分割しにくい不動産が争族の火種に
Gさんには姉がおり、2人とも都内の実家を離れて一人暮らしをしていました。父親は数年前に亡くなり、資産の大部分を占める自宅は、相続税の軽減を図るため、配偶者控除と小規模宅地等の特例を適用して母親が相続しました。
やがて母親も高齢になり広い自宅の維持管理が負担になったことから、姉とGさんに「どちらか一緒に住んでくれないか」と相談がありました。姉は「仕事が忙しくて自宅のことまで手が回らない」と言います。Gさんも忙しく働いていましたが、母親の体を気遣って自分が実家に戻ることにしました。自分が母親と同居すれば、母親の相続の際は小規模宅地等の特例を適用し、相続税を軽減することもできます。
その後、母親が亡くなり、二次相続が発生しました。父親と同じく、母親の資産もそのほとんどが自宅です。Gさんはこれまで大切に守ってきた自宅は自分が相続し、このまま住み続けたいと考えていました。しかし、姉は妹が都内の広い自宅を相続し、自分が相続するのはわずかな金融資産ということに納得せず、「妹が自宅を相続するのなら、妹は自分に代償金を支払うべきだ」と主張します。そう言われても、Gさんには代償金を払う資金などありません。結局、相続税の申告期限が過ぎても遺産分割協議がまとまらなかったため特例も使えません。相続税を支払うには、実家を売却するしかなさそうです……。
Case04 母親の世話をしてきた長女。財産の使い込みを兄弟から疑われることに
父親が亡くなった後、一人暮らしになった母親の世話は長女のKさんがしてきました。長男と次男は仕事で忙しく、母親の世話はKさんに任せきりでしたが、会うたびに感謝を示してくれることもあり兄弟仲は良好でした。
しかし、母親が亡くなると思ってもみないことが起きました。次男が「姉は母のお金を使い込み、自分たちに通帳も見せない」と親類に話したのです。そして、「父の相続で母は3,000万円受け取ったのに、1,000万円しか残っていない。数年の間にそんなに使うわけがない」と主張してきました。
Kさんは税理士に相談し、一次相続後の支出について精査してもらうことにしました。介護保険のサービス利用料、医療費、冠婚葬祭、有料老人ホームの入居一時金など、計算すると残高の減少は十分説明がつき、不審な点はないことが証明されました。その後、経緯を見守っていた長男からの提案で3分の1ずつを基準に、Kさんはやや多くの遺産を相続することになりました。しかし、一度亀裂が入ってしまった兄弟の関係がもとに戻ることはありませんでした。幼いころから仲がよかった3人でしたが、遺産分割協議終了後は一切連絡をしないほど疎遠になってしまったのです……。
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次回は、二次相続で問題が起きやすい理由についてご紹介します。お楽しみに!
(第2回に続く)
公認会計士・税理士。1967年、神奈川県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業後、安田信託銀行入行。2000年、公認会計士登録。2002年、山田&パートナーズ会計事務所、株式会社ソニーを経て、タクトコンサルティング入社。2009年、税理士法人タクトコンサルティング代表社員就任。2020年、株式会社タクトコンサルティング代表取締役社長就任。現在、税理士法人タクトコンサルティングにて、相続、譲渡、交換、土地活用、企業組織再編、M&A、事業承継対策等の実務に携わる。
税理士法人タクトコンサルティング 代表社員・株式会社タクトコンサルティング 代表取締役社長
山田毅志 氏