事例でわかる、二次相続の“大問題”
一次相続の際の相続人同士のわだかまりが二次相続で噴出したり、親の介護負担と遺産分割をめぐって相続人の主張が対立したり……。そうしたことから“争族”に発展するケースは多々あります。まずは、二次相続で問題が生じた事例を見ていきましょう。
Case01 一次相続で譲歩した次女、三女が二次相続で権利を主張
江戸末期から続く老舗和菓子店を営むW家。当主の父親が逝去し、母親と娘3人が相続人となりました。長女の夫はW家の婿養子となっており、長女と夫が店を承継することは父親の生前から決まっていました。次女と三女は独立し、それぞれ家庭があります。
従前より実質的な経営は娘夫婦が担い、借入をしながら店舗の改装や新規出店を行ってきたこともあり、父親は妻に資産の半分、残り半分のほとんどを長女夫婦に相続すると決めていました。その意向を踏まえ、母親は次女と三女に「家業を存続させるために、お父さんが決めた通りにしたい」と話し頭を下げました。次女は不満を口にしましたが、「事業には資金が必要で、お父さんが決めたことだから」と母親に説得され、引き下がることにしました。
しかし2年後に母親が他界し、二次相続が発生するやいなや、次女が長女夫婦に「一次相続の際、自分と妹は母に配慮して分割協議に合意したけれど、今度はそうはいかない」と宣言したのです。長女は法定相続分に加え、母親がお店のために使ってほしいと言っていた現預金も次女と三女に渡しましたが、次女は「姉夫婦は一次相続の際にそれ以上もらっている」と不服を訴え、“争族”に発展。姉妹は相続をめぐって反目するようになってしまいました……。
Case02 父の他界後、母を献身的に介護。その苦労が遺産分割割合に考慮されず…
Yさんは3人兄弟の次男で、兄弟3人とも実家を出て家庭を持っていました。しかし、父親が亡くなったのを機に、Yさんは母の面倒をみようと妻と子どもとともに実家に戻り、母親と同居することを決意。そんなYさんに長男と三男は感謝の気持ちを伝えました。
ほどなく母親は介護が必要となり、数年間の在宅介護の後、有料老人ホームに入居しました。そうなっても、Yさんや妻は頻繁に施設を訪問し、母親の身の回りの世話をしていました。母親もYさんを頼りにし、Yさんに資産の多くを残したいとよく口にしていました。
やがて母親が逝去し、遺言がなかったため兄弟3人で遺産分割協議を行うことになりました。Yさんは妻や子どもの協力も得ながら、母親の日常的な世話から介護、施設探し、入居後の対応まで一切を行ってきました。遺産分割協議においてはその苦労が当然考慮されるものとYさんは考えていましたが、長男と三男は3分の1ずつの分割を主張。「母親の面倒をみてくれたことは感謝しているが、都心の一戸建ての実家に賃料なしで住めたのだから恩恵もあったはずだ」というのが2人の言い分です。
最終的には、自宅をYさんが相続し、駐車場などの収益物件を長男と三男が取得する形で、ほぼ法定相続分での分割を実施することに。母親を介護してきたことに対して何の報いもないことにYさんは憤慨しましたが、母親の遺言書もなくどうすることもできませんでした……。