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「選ばれる物件」を生む4つのステップ

※ 2026年4月1日付で「レッツ資産活用部」から部門名称を変更しました

ソリューションパートナー本部 プライベートソリューション部

日下部 裕貴yuki kusakabe

「選ばれる物件」を生む4つのステップ

「選ばれる物件」を生むための改修・リノベーションを実施する際、実行すべきステップは以下の4つです。

  1. 所有物件の現状把握・分析
  2. 対策の検討
  3. 施工業者の選定
  4. 実施の判断

いずれも調査・判断が難しい事柄のため、賃貸市場の情報を持ち、賃貸経営のノウハウや知見が豊富な専門家に相談することが必須です。その際にはオーナー様ご自身もどのように考えて事業判断を行うとよいのかを事前に把握しておくことが大切です。では、それぞれのステップの概要とポイント、留意点について見ていきましょう。

【合わせて読む】●データから見る賃貸住宅市場の“今”

STEP 01 所有物件の現状把握・分析

まずはご所有物件の現状の把握と分析を行います。

その際に重要となるのが周辺環境です。駅からの距離(所要時間)、学校、病院、店舗など生活に必要な施設までの距離の他、物件の所在地が該当する学区、住宅街か繁華街なのかなど周辺環境について改めて確認します。それによって、どのような入居者がターゲットになるかを把握することができます。

築20、30年など年数を重ねれば、地域の状況も変化していきます。竣工当時とは環境が変化し、主なターゲット層も大きく変わっているケースは少なくありません。

例えば、学生や単身者向けに建てたものの近辺に似たような物件が多く建ち競争力が低下したなどのケースも多々あります。また、ファミリー向けに3LDKの間取りを増やしたけれども、部屋数の多さよりもLDKの広さが優先されるようになったなど、竣工時とニーズが変わっているエリアもあります。このように、現在の周辺環境や主なターゲット層を把握し、ご所有の賃貸不動産がそれに合致しているか否かを分析していきます。

STEP 02 対策の検討

所有している賃貸不動産の把握・分析が終わったら、それを「選ばれる物件」にするためにどのようにバリューアップするか、改修項目のイメージをつくっていきます。この先は具体的な改修プランの設計に入っていきますので、現実的には次のステップ3と同時に進めていくことをお勧めします。

 

図表6にあるように、改修項目の工事内容は3つの段階に分けられます。第1段階は「建物性能の維持・保全」、第2段階が「定番設備・仕様の導入」、第3段階が「付加価値を向上させる設備・仕様の導入」で、賃料アップにつながるのは第2段階以降です。

第1段階「建物性能の維持・保全」の工事とは、建物の耐久性を維持するために不可欠な工事です。

 

共用部では屋上防水や外壁工事、鉄部塗装など、専有部では壁紙やフローリング、畳などの張り替えの他、老朽化により故障した設備の交換などを行います。過去の「レッツプラザ」でもお伝えしてきたように、建物や付属設備は竣工から年月が経つにつれ老朽化していきます。放置していると、建物が損傷し雨漏りなどのトラブルが発生したり、設備が故障し入居者に被害が及んだりする可能性があります。第1段階は必ず実施しましょう。

 

第2段階「定番設備・仕様の導入」とは、PART01でご紹介した必須の設備の導入に加え、居室の畳をフローリングにする、カーテンレールをボックスタイプにするなどが考えられます。最近では、間仕切り壁をなくして引き戸(スライドウォール)をつけることで、普段は広いLDKとして使い、必要に応じて間仕切りができるなど可変性の高いプランも人気です。

また、戸境壁を撤去し、2住戸をつなげた広い住戸面積に変更することも有効なプランの1つです。ただし、戸境壁が構造壁になっている場合は変更できないため、調査・検討が必要です。

第3段階「付加価値を向上させる設備・仕様の導入」では、PART01で触れた「付加価値を高める設備」を導入する他、一定規模以上のペット可物件であればペットの足洗い場を設ける、エレベーターにペットボタンを装備するなども有効です。また、IoT対応設備を多数取り入れスマートホーム化するといったプランも考えられます。

一方で、これらはいずれも入居意欲を高める設備ではありますが、投資費用(=イニシャルコスト)が膨らむうえ、故障した際には修理や交換などの費用が発生するため、賃料とコストとのバランスをじっくり検討する必要があります。賃貸管理会社などと相談しながら、プランを設計していきましょう。

 

STEP 03 施工業者の選定

ステップ2の対策の検討と同時に行いたいのが、施工業者に相談し、費用や改修プランの実現性について検討することです。施工業者の選定は不動産価値にも大きく影響するためくれぐれも慎重に行いましょう。また、改修工事の内容は賃料設定に関わりますので賃貸管理会社にも工事の内容を共有し、賃料を査定してもらうようにしましょう。

改修工事の見積もりを確認する際は、工事内容や各項目に紐づく費用、追加作業、その他の追加費用などを入念に確認します。複数の施工業者に相談する場合は、それぞれどのような特徴があるかも把握することが大切です。

 

施工業者を選定する際の項目を図表7に示しました。

2社を比較すると、A社は意匠性(デザイン性)が高いものの、コストを重視して設備や仕様を採用する方針です。コストは抑えられる一方、使い勝手に懸念があり、改修後に見込める賃料は低くなることが想定されます。そのため、投資効率がよいとはいえません。一方、B社の意匠性はシンプルで、設備・仕様も標準的ですが、入居者のターゲット層を踏まえたプランになっています。A社と比べると改修コストはかかりますが、完工後の見込み賃料は高く、高い投資効率が期待できます。よって、この比較ではB社が最適な施工業者といえます。

なお、図表には記載していませんが、改修工事の実施時期にも気をつけましょう。例えば、屋上防水や鉄部塗装、外壁工事などの大規模修繕はまとめて実施し、各住戸の改修工事は空室になった際に原状回復工事とともに行うこともできます。あるいは、改修・リノベーションを計画した以降の新規入居者とは定期借家契約を結び、ある程度空室が増えたところでまとまった戸数の改修工事を実施するなどの方法もあります。こうした改修工事の実施時期や進め方についても、施工業者としっかり打ち合わせ段取りをつけることで、改修プランを立てることができます。

 

STEP 04 実施の判断

最後のステップ4では、施工業者からの提案をもとに戦略実行の可否について最終判断をしていきます。その際に重要なのは、賃料の増加分だけを見るのではなく、賃料収入から費用を控除したキャッシュフローに注目し、改修費の回収を考えることです。「収入から運営費を引いた後のキャッシュフロー÷工事費」で「改修投資利回り」が求められ、「1÷改修投資利回り」で改修費を回収できる年数がわかります。

費用を借り入れで賄う場合は、元金と利息返済後の手残り金額も重要となります。毎月の返済額は借入額や金利、返済期間によって決まりますが、改修・リノベーションを行うための借り入れの場合は新築や建替えに比べ設定可能な返済期間が短く、そのぶん毎月の返済額が大きくなります。返済計画にも注意するようにしましょう。

 

図表8は投資額と期待賃料の関係を示したイメージ図です。横軸は投資額(改修にかける費用)、縦軸は投資によって期待できる賃料の額を表しています。賃料についてはそのエリアの相場等があるため、ある程度のところが上限となります。そのため、投資額が一定のラインを超えると賃料が見合わなくなり、利回りは低下してしまいます。ステップ3でご説明したように、改修・リノベーションによってデザイン性や設備のグレードを高めたとしても、賃料に反映できなければ、投資した意味がありません。賃料と投資額の分水嶺(分岐点)を見極めることが重要というわけです。

冒頭でもお伝えしたように、いずれも個々の物件によって特性が異なりますので、賃貸住宅市場の情報が蓄積されており、ノウハウや知見が豊富な専門家とともに詳細を検討していくことが重要となります。

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