「違反建築」と「既存不適格」
本来、建物を建築する場合には、「建築確認申請」を提出し、役所の許可を得たうえで建築し、完成検査を受け「検査済証」を取得するというルールがあります。また、一定の増改築・用途変更等についても同様です。このルールに反した場合、その建物は「違反建築」となってしまいます。
違反建築になった原因としては、
■ 建築確認申請の内容と異なった建物を建ててしまった。
■ 建物建築後に敷地の一部を売却してしまった。
■ 無許可、あるいは許可内容と異なる増改築をしてしまった。
■ 許可を受けた用途と異なった用途に使用している。
などが考えられます。
また、よく見受けられる例として
・本来駐車場として許可を受けた1階部分を店舗に改造している。
・吹き抜け部分に床を張って居室にしている。
などがあげられます。
軽微な例として、「マンションの窓先空地(避難路スペース)に駐輪場を作っている」なども「違反建築」にあたります。
次に「既存不適格」について説明します。
「既存不適格」の定義を一言で説明すると「建築当初は法令を遵守して建築されたものの、その後の法令改正に伴い、現行の法令上の制限では不適格となってしまった建物」となります。
そうなってしまった具体的な原因をあげると
■ 建物を建築したあと建ぺい率や容積率の制限数値が変わった。
■ 建物を建築したあと用途制限の基準が変わってしまった。
■ 建物建築後に道路拡張のため敷地の一部が収用され、敷地面積が減ってしまった。
などが考えられます。
「違反建築」等の影響
「違反建築」と「既存不適格」の違いについてある程度ご理解いただけたと思いますが、そのことがどんな影響を及ぼすのでしょうか?
「違反建築」の場合、行政は是正措置命令を出すことができます。特に建築中や入居前の段階ではその可能性が高くなります。また、「違反建築」であることが判明した場合、銀行の融資が受けられない可能性があります。
例えば、完成前の建売住宅を買って引越しの手配、家財の新調をし、小学校の転校手続きも済ませ、新居での生活を心待ちにしていたところが、「違反建築」であることが発覚し、行政から是正措置命令を出され、なおかつ予定していた「住宅ローン」が受けられなくなってしまう。ということが起こる可能性があるのです。
また、「違反建築」の場合、原則として増改築が認められません。
簡易に適法な状態に復元できるような違法状態はまだ救いがありますが、「違反建築」であることによって不動産の資産価値に与えるダメージも少なくありません。
これに対し「既存不適格」の場合は、「是正措置命令」もありませんし、融資を受けられる可能性も高くなります。ただし、建物を建て替える場合には現行法規の制限に従う必要があるので、現状と同規模の建物が建てられなかったり、用途の制限を受ける可能性があります。
賃貸面積が増えるからと安易に増改築をしたり、駐車場を無許可で店舗等に用途変更をした場合、思いがけず資産価値が下がってしまうなど、デメリットが大きいことを知っておくべきですし、不動産を購入するにあたっても注意が必要です。
最後に、「違反建築」等の簡単なチェックポイントをあげておきましょう。
➀ 建築確認通知・検査済証の有無
➁ 建築確認と登記簿や現状とで面積・形状・用途等に相違は無いか?
まずはこの2点について調べてみてください。
※本記事は2017年6月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。
関西支店 ソリューション営業部長
三井不動産リアルティ株式会社
神宮 保彦