知っておきたい不動産の話

不動産取引の落とし穴、「私道」トラブルに要注意!

今回は前回に引き続き「道路」についてお話します。道路が建物の建築に大きな影響を与えることは前回「不動産の評価に欠かせない「道路」の知識」でご説明しましたが、もうひとつ、資産管理上重要な「道路と権利」の問題に関しても知っておかなければなりません。特に「私道」には、充分な理解と調査が必要です。今回は、この辺りをご説明していきます。

セットバック部分

建築基準法42条2項では、幅員4mに満たない既存の道路について、中心線から2mまでの部分を道路に供出することで建築を認めるかわりに、道路に供出した部分(セットバック)には構築物の設置を認めず、建物の敷地面積に参入することができないと規定しています(図2参照)。

このセットバック部分は道路に供出しているのだから第三者の通行が認められるだろうと思いますが、道路状に整備されていても私有地であることに違いなく、第三者が当然に通行できることにはならないのです。
本来、道路であっても私権の及ぶ土地を通行するには所有者の承諾が必要であり、水道工事などのために道路を掘削する際にも当然に道路所有者の承諾が必要となります。不動産広告に「別途私道負担部分12㎡有」といった記載を見かけますが、これによって道路の所有者としての権利が得られるということになるので、決して無駄なものではないのです。

道路の維持管理

「公道」については、それが国道か県道か市道かによって、各行政が道路の維持管理をおこなっていますが、私道については、その所有者がしなくてはなりません。

例えば、あなたが私道を所有しているとします。道路がデコボコになったため、あなたは50万円の大枚をはたいて綺麗に舗装しました。そこを大型車両が往来したり、関係ない人が勝手に穴を空けたりしたらどうでしょうか?「私の承諾なしに勝手なことをするな!」と思いませんか? そういうことで承諾が必要になるのです。

最近は持分の無い私道に接している土地に関する融資について金融機関が「通行・掘削の承諾書」の取得を条件としたり、取引の相手方が、それを求めるケースが多くなっています。その理由は、私道に関する紛争が多いからにほかなりません。

私道に接する土地を取引する場合、あるいは私道を所有している場合には、ここでお話したような内容を充分に理解しておく必要があります。

※本記事は2017年1月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

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関西支店 ソリューション営業部長

三井不動産リアルティ株式会社

神宮 保彦

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