その他、二次相続で活用できる自宅敷地の減額特例
特定居住用宅地等の特例をどうにか適用する方法を探ってみました。しかし、同居親族も家なき子に該当する相続人もいないため、被相続人の自宅敷地を減額することができないことも多々あります。なお、一次相続では妻が自宅敷地を相続すれば特定居住用宅地等の特例は必ず適用できるため、問題となるのは二次相続です。
このような場合は、特定居住用宅地等とは別の減額特例が適用できないかを考えるのも1つかもしれません。以下に、一次相続後に自宅が空き家の場合、一次相続後に妻が1人で居住していた場合という2つのケースで、具体的な方法を考えてみましょう。
同居親族・家なき子のいずれにも該当する相続人がおらず…… ①一次相続後、自宅が空き家(妻が老人ホームへ転居等)の場合
自宅敷地の相続税評価額が高いなどで何らかの減額特例を適用したい場合は、事業用の土地等に対する減額特例が適用できないかを考えるのはいかがでしょう。例えば、自宅建物を第三者に貸付けて貸付事業の用に供するものへと利用変更すれば、貸付事業用宅地等として200㎡まで50%減額の特例を適用することができます。また、老朽化した建物ならば、思い切って賃貸アパートなどに建て替えて有効活用することも考えられます。
なお、貸付事業が事業的規模(アパート・マンションなどの場合は部屋数が10部屋以上、戸建の場合は5棟以上)でない方は、その利用を変更したとしても貸付事業用宅地等の特例を適用できるのは3年後になるため計画的に行うことが大切です。また、前述のように相続まで空き家のままにしておいた場合には、相続空き家の3,000万円控除が適用できるケースもあります。どちらが有効かを事前に検討しておくのがよいでしょう。
②一次相続後、自宅に妻が1人で居住していた場合
このままでは小規模宅地等の特例を利用することができません。そこで、もし同族法人を所有している方であれば、自宅建物を同族法人が買い取って社宅化するなどはいかがでしょう。自宅建物だけを買い取るので、土地を所有する妻には法人から地代を支払うことにします。そうすると、土地貸付業になりますから貸付事業用宅地等の特例対象になります。なお、事業的規模でない場合には特例の適用が賃貸開始から3年後になるのは①と同様です。
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どのようなケースであっても特定居住用宅地等の特例を適用するための対策は、被相続人や相続人の住まい・ライフスタイルに変更を伴うことになります。だからこそ、対策の検討はできるだけ早めに行いましょう。
税理士。1978年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。2005年、税理士法人エーティーオー財産相談室入社。資産税を中心とする税務申告、不動産税務コンサルティング業務などを提供。2021年、同法人代表社員に就任し、現在に至る。著書に『土地の有効活用と相続・承継対策』(税務研究会出版局)など。
税理士法人エーティーオー 財産相談室 代表社員
高木 康裕