スペシャリスト ビュー

税理士法人タクトコンサルティング 代表社員・税理士 玉越 賢治 氏

使いやすくなった新事業承継税制で会社の相続を円滑に
有利な制度を活用しながら“会社”という貴重な資産を世代を越えて確かに引き継ぐ。

早めの開始手続きを心がけてメリットの多い制度の活用を

現在、日本の中小企業の数は約381万社(※)にのぼりますが、これまでの事業承継税制の利用件数の累計は、平成29年3月の時点で相続・贈与合わせて全国で約2,000件に過ぎません。今回の改正によって、国としてはこれをさらに毎年2,000件程度ずつ増やしていくことを目標にしているようです。

※中小企業庁調査室「2017年度版中小企業白書 概要」(平成29年4月)より

ご紹介したとおり、今回の改正では大幅な条件緩和がなされており、事業承継税制はかつてないほど使いやすく、そして税制面で有利な仕組みになりました。税理士としては、中小企業経営者の皆様にぜひこの制度をご利用いただきたいと考えていますが、最後に注意点をお伝えしておきたいと思います。

まず、今回の事業承継税制は前述のとおり、平成30年1月1日から平成39年12月31日の10年間の間におこなわれた贈与・相続で取得する非上場会社の株式に限って適用される時限的な措置です。そして、この時限措置を利用するにあたっては、都道府県に「特例承継計画」を提出し、「特例認定承継会社」という認定を受ける必要があります。ここで気を付けたいのは、私どものような専門家によるチェックや助言・指導をもとに作成する「特例承継計画」の都道府県への提出期間が、平成30年4月からの5年間しかないということです。

今から5年というとまだまだ時間があるようにも思えますが、計画の提出には、経営者や後継者など当事者の意思と方針の明確化、社内体制の環境整備、事前準備などが不可欠となります。そして、そうした準備作業を考えれば、5年というのは決して長い時間とは言えません。ですから、私どもではセミナーなどでまず、「この制度をぜひ使ってください」と訴えるとともに、「早めに準備を整えて、とにかく特例承継計画を作成しましょう」とお勧めしています。これからの事業承継に備えたいとお考えの中小企業経営者の皆様は、ぜひ制度の活用をご検討ください。

※本記事は2018年5月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

関西大学経済学部卒業。商工組合中央金庫、株式会社リクルートを経て、平成6年に株式会社タクトコンサルティング入社。同年、税理士登録。平成15年に税理士法人タクトコンサルティングを設立し代表社員に就任。平成24年、株式会社タクトコンサルティング代表取締役社長に就任。中小企業庁「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(事業承継検討会)」委員などを務める。共著に「事業承継実務全書」(日本法令)ほか多数。

税理士法人タクトコンサルティング 代表社員・税理士

玉越 賢治 氏

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