今を知る。先を見る。現状分析から始める資産形成

子供たちへの遺産分割にお悩みのA様

都内や郊外、地方などに複数の収益不動産をご所有のA様(75歳)は、ご自身の相続発生時に、お子様たちが各自の相続分や保有・売却などの意向の相違でもめないか不安をお持ちでした。

相続人となるのは、賃貸住宅にお住まいのご長男(47歳)、自営業を営み、自宅をご所有のご次男(45歳)、ご結婚され、持ち家で暮らすご長女(39歳)の3人。A様はそれぞれ等分に遺産を相続させたいとお考えでしたが、各不動産は資産価値の差が大きく、三等分するのは容易ではありません。さらに、ご長男とご長女は相続する不動産の継続保有による賃料収入に期待しているようで、一方ご次男は事業の資金繰りで不動産の売却・現金化を考えているようでした。

また、A様は相続税の納税資金確保のために一部の不動産の売却も検討。しかし測量や賃借人退去などで売却・現金化に時間を要することも懸念されていました。こうした状況のもと、まずご提案したのが「資産ドック」による現状分析です。

各不動産の現状と課題

①一戸建てのご自宅(築32年)

A様には特に不満もなく、持ち家のないご長男に相続させれば、高い相続税圧縮効果が期待できます。

②地方駅前の一棟マンション(計20戸)

収益の柱となっている不動産で、敷地面積が広いため資産価値も高く、相続税圧縮効果も期待できます。駅前で満室稼働中であるものの、今後大規模な修繕が必要になることが不安要素でした。

③郊外のアパート(計10戸)

老朽化で稼働率と賃料が低下傾向にある収益力の低い不動産です。立退きが必要な不動産として市場低迷期には売却しづらくなることも想定されます。

④都内のアパート(計8戸)

人気エリアの駅近物件で空室もすぐ埋まる高稼働物件です。収益性、安定性、流通性に優れています。

⑤郊外の月極駐車場(計15台)

4台分が非稼働で収益性が低い状態でした。公道に面した整形地で分譲住宅用地としての需要が見込めますが、土地の測量図がなく境界未確定で売却する場合、若干時間がかかりそうです。

三井不動産リアルティからのご提案

A様のご所有不動産は、目的、種別、エリアなど複数の要素が混在する構成です。そこで個々の所有目的と現状を踏まえて、次のとおりご提案しました。

まず、「①一戸建てのご自宅」は高い相続税圧縮効果も視野にご長男に相続させることをご提案しました。次に「②地方駅前の一棟マンション」と「③郊外のアパート」は、売却してほぼ同評価額の都心の区分所有マンション4戸に組み換え、うち2戸をご次男に、残る2戸をご長男とご長女に1戸ずつ相続させる案を提示。さらに「④都内のアパート」は将来ご長女に相続させ、「⑤郊外の月極駐車場」は納税資金、そして、3人の相続財産の調整用資金を確保するための売却用資産として継続保有をお勧めしました。

この提案は3人に2物件ずつ相続させる分割対策に加え、節税対策や納税対策も加味した総合的な相続対策となっています。

当社からの提案を受けて、A様はお子様たちと将来の相続を見据えた話し合いの機会を持たれました。その結果、ご提案どおり、「②地方駅前の一棟マンション」と「③郊外のアパート」については、都心区分所有マンションへの組み換えを今後の基本方針に、その他3つの不動産は当面、継続保有される予定です。

ご所有資産を分けやすくすることで、A様が特に懸念されていた遺産分割の問題も解決への筋道が見えてきました。引き続き、今後の資産組み換えや売却などをお手伝いさせていただきます。

※本記事は2020年10月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

曽我部 陽平

三井不動産リアルティ株式会社
ソリューション事業本部

コンサルティング営業一部

曽我部 陽平

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