スペシャリスト ビュー

章司法書士法人 章司法書士法人 太田垣 章子 氏

賃貸経営の質を左右する
管理会社選びの重要性

とはいえ、ある程度の規模の賃貸物件であれば、最近はご自身では管理できず、管理会社に委託されているオーナーも多くなっています。ですから、管理を徹底するにせよ、小さな変化を見逃さないようにするにせよ、そうした賃貸トラブルを未然に防ぐための取り組みは、管理会社との二人三脚ということになります。

こうなると、気をつけるべきはその質です。管理業務もそこそこに賃料の数%を管理費として徴収する会社もある一方で、オーナーのビジネスパートナーとして一緒に賃貸事業を成長させていこうと、24時間体制のコールセンターを備えたり、様々な入居者サービスを提供するような熱心な会社もあります。いわば、管理会社の二極化が進んでいるのです。

そのため、オーナーには、その管理会社がどんな賃貸管理を実現してくれるのか、その姿勢や考え方を見極められるだけの見識が求められます。その見立てを誤れば、ずさんな管理が横行し、トラブルの芽も見逃され、家賃滞納などのトラブルが発生するリスクが大きくなるでしょう。

まずは、管理を委託するならきちんとした会社を選ぶこと、そして、決して管理会社に任せきりにせず、オーナー自身も賃貸管理に関する勉強を重ねて、その仕事ぶりをしっかりチェックすることが大切です。

もし、賃貸トラブルに
直面したら――

それでも、不幸にも家賃滞納などのトラブルに直面してしまったら、すぐに私どものようなプロの力を借りていただければと思います。というのも、滞納期間が1、2か月程度であれば、対処して解決できるケースがほとんどで、滞納額が少なければ損益をプラスマイナスゼロにすることも不可能ではありません。しかし滞納が5、6か月となってしまうと、よほどのことがない限り滞納を解消することは難しいのが現実です。

だからこそ、私どもの事務所では最短でも4か月はかかる裁判での解決ではなく、賃借人と粘り強く交渉を重ね、当事者同士による早期の円満解決を目指すのです。その結果、私どもでは平均約2か月半で家賃滞納トラブルを解決に導いています。

こうしたスピーディーな問題解決は、オーナーの経済的な損失を最小化するだけでなく、滞納した人のためにもなると私たちは考えています。滞納者は収支バランスが崩れているはずですから、問題が早く解決すれば、その分だけ早く、経済の立て直し、人生の仕切り直しに向けて再出発できるのではないでしょうか。

ひと昔前はオーナーの自主管理も多く、入居者を集める仲介会社との付き合いはあっても、管理に、そしてそのために必要な専門知識やノウハウに、お金を払うという発想自体がほとんどありませんでした。特に小さなアパートなどでは定期的な清掃作業の委託以外に、賃料の数パーセントの管理料を払って管理を依頼するオーナーは少数派だったと思います。

しかし、賃貸経営の環境は大きく変化しました。物件の老朽化が進めば手間も増え、オーナー自身も高齢になって管理が行き届かなくなっていく中、長期安定経営を維持していくには、オーナーと信頼できる管理のプロとが一緒になって、物件の価値を守っていくことがポイントになってくるのではないでしょうか。

※本記事は2016年1月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

大学卒業後、オリックスブルーウェーブで広報として勤務し、退職後、司法書士資格を取得。平成18年10月独立、平成22年11月個人事務所を法人化。平成24年5月東京事務所設立。登記はもちろん、資産家を対象としたコンサルティングまで業務範囲は幅広い。特に裁判業務を得意とし、建物明渡をはじめ賃貸トラブルに関する実績が豊富。業界専門誌へ長年連載し、家主や不動産業界への講演を多数おこなっている。

章司法書士法人 代表司法書士

太田垣 章子 氏

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