今を知る。先を見る。現状分析から始める資産形成

不動産経営の方向性についてお悩みのA様

今回ご紹介するのは、都内に複数の住居系不動産を所有するA様(50歳)です。家族構成の変化から賃貸マンションへ転居したのをきっかけに、それまで住んでいた都心の区分所有マンションの賃貸運用を開始。その後、区分所有マンションや一棟アパートなど投資用不動産を新たに購入し、賃貸経営を実践されてきました。

今後も積極的な不動産投資を通じて着実な資産形成を図りたいものの、例えば、高い借入金利によるキャッシュフローの圧迫や、賃料水準の高い元ご自宅の区分所有マンションの退去リスクといった問題も気がかりだったというA様。このまま賃貸経営を継続するか、あるいは、賃貸市場の先行き次第で不動産資産を売却すべきなのか、しばらく悩まれていたと言います。

そこで、現在の資産の状況を踏まえた上でプロのアドバイスを求めたいと、A様は三井不動産リアルティに相談。同社独自の「資産ドック」をもとに、今後の方向性について検討することになりました。

各不動産の現状と課題

①都心の区分所有マンション(築7年)

現在は賃貸中の元ご自宅です。賃料単価が一般的な住戸より低くなるメゾネットタイプの住戸で、もし売却する場合には、賃貸中よりも空室状態のほうが高い水準での取引が見込めます。

②都内の区分所有マンション(築24年)

投資用不動産としてA様が初めて購入された駅から徒歩10分のファミリータイプの区分所有マンションです。賃貸後の入居者の入れ替えもなく、安定的に稼働しています。

③一棟アパート(計8戸)

駅から徒歩16分の鉄骨造アパートです。現在は満室稼働中ですが、駅から距離があり、さらに築16年ということもあって、将来の稼働率低下や修繕コスト増大が懸念材料となっています。

④一棟アパート(計20戸)

駅から徒歩3分の築1年の築浅物件で、シェアハウスとして運用しています。サブリース契約による運用のため空室リスクもなく、安定的な投資用不動産と言えます。

三井不動産リアルティからのご提案

まず、大きな課題であったキャッシュフローの改善については、複数の借入先金融機関を一本化したうえで、金利を軽減するために借入条件について交渉するようお勧めしました。加えて、個々の不動産の市場流通性や収益性などを評価した「資産ドック」の分析に基づくご提案の内容が表1です。

「①都心の区分所有マンション」については、将来の売却に備えて普通賃貸借契約から定期借家契約への切り替えを、「②都心の区分所有マンション」は現時点で取得時より高く売れる可能性があること、また取得時の借入金利が高いことに鑑み、売却し、そこで得られた資金による新たな不動産投資をご提案。さらなる資産形成を目指すA様のご意向を考慮して、投資対象としては都心部の一棟マンションをお勧めし、法人名義による不動産購入で所得を分散する所得税対策もご提案しました。

当社の提案を受けて、A様は「②都内の区分所有マンション」を売却された一方、「①都心の区分所有マンション」については奥様がとても気に入られていることもあり、当面は保有されることになりました。また、金融機関の組み換えによる金利軽減と区分マンションの整理によってキャッシュフローが改善されたことで、都心部の一棟マンションを新たに取得されました。

すでに不動産所有法人を設立され、現在は次なる投資対象を模索されているA様を引き続きサポートしてまいります。

※本記事は2020年6月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

曽我部 陽平

三井不動産リアルティ株式会社
ソリューション事業本部

コンサルティング営業一部

曽我部 陽平

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