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関東大震災から100年……、今改めて考える! 資産を次世代につなぐ、地震リスク緊急対策【第1回】

旧耐震基準と新耐震基準の大きな違い

ご所有不動産の地震対策を考えるにあたり、まずは建物の状況を把握することから始めましょう。
その際に押さえていただきたいのは、後述する建築基準法の旧耐震基準と新耐震基準のどちらで建てた建物かということです。

建築基準法を改めて紐解くと、「国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途について最低基準を定めた法律」とあります。この建築基準法は、大きな被害をもたらした地震を契機に、幾度も改正が行われてきました(図表3)。

中でも注目すべきは、宮城県沖地震(1978年)を機に施行された1981年の改正です。マグニチュード7.4、最大震度5を記録した宮城県沖地震では、死者27人、負傷者1100人、被災者2万6342人、家屋全壊580戸、半壊5185戸、一部損壊5万7179戸(国立防災科学技術センター「1978年宮城県沖地震による災害現地調査報告」1978年10月より)という多大な被害が生じました。

当時の建築基準法で定めた耐震基準(旧耐震基準)は「震度5の揺れで建築物が倒壊・崩壊しないこと」でした。しかし、家屋の倒壊による被害がもたらされたことで基準の見直しが行われ、1981年に改正された新しい耐震基準(新耐震基準)では「震度6強から7でも倒壊・崩壊しないこと」となったのです(図表4)。

1981年の法改正以降、東日本大震災(2011年)や熊本地震(2016年)など、震度7を観測する地震も発生していますが、新耐震基準をクリアした建物であれば同程度の地震が起きても基本的に倒壊しないと考えられます。対して、旧耐震基準の建物は震度6以上の地震に耐えられるかどうか定かではありません。

阪神淡路大震災(1995年)で非常に多くの建物が倒壊した光景を覚えている方も多いでしょう。あれほど甚大な被害が出たのは、当時新耐震基準が制定されてから十分な期間が経っておらず、旧耐震基準の建物がまだ多かったことも一因と思われます。新耐震基準と旧耐震基準では、耐震性と安全性に大きな差があるわけです。

所有不動産が旧耐震の場合は耐震診断で強度を確認

では、もし自分が所有している物件が新耐震基準か旧耐震基準かわからないときはどうしたらよいのでしょう。その場合は、建築確認通知書(現在の「建築確認済証」)を確認しましょう。

建築確認通知書とは、建物を建てるにあたり、計画建物が建築法規に合致しているか行政機関等が審査したことを証する書類です。この建築確認通知書の発行日が、1981年5月31日以前であれば旧耐震基準であり、同年6月1日以降ならば新耐震基準です。

建築確認通知書が見つからない場合は、建築確認申請を行った行政機関に建築確認台帳記載事項証明を発行してもらうことで確認できます。

建築確認通知書を確認した結果、所有不動産が旧耐震基準だった場合は、耐震診断を行うことをお勧めします。耐震診断は、各行政で相談窓口を設けていることが多いので問い合わせてみてください。また、新築時の設計会社や施工会社に相談するのも選択肢です。

建築確認通知書の発行日が旧耐震基準のタイミングであっても、設計会社やオーナーが当時の耐震基準(旧耐震基準)以上の耐震強度を指示して設計していた事例もありますし、1980年に設計されたものであれば法改正を見据えて耐震性を強化していた可能性もあります。

「旧耐震=耐震性に不安あり」とは一概には言えないため、耐震診断が重要なのです。そして、耐震診断で耐震強度が不足の判定となった場合は、前述のような重大なリスクを抱えた状態であり、早急な対策が必要といえます。

◆   ◆   ◆

耐震強度に不安を抱える不動産を所有するリスクについて、おわかりいただけたでしょうか。次回は、そのようなリスクを軽減するための対策と、ご自身にとって最適な対策を検討するための手順について見ていきます。


(第2回に続く)

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