〈事業性〉物件選びの際は経費や空室率も考慮
事業性という面での資産の組み換えのメリットは、所有していた老朽化不動産を自身の目的・希望に合わせ、まったく異なるものに換えられることでしょう。例えば、所有しているマンション1棟を売却して複数の区分マンションを購入して賃貸したり、都心の駐車場を売却して郊外のマンションを購入し自宅として利用したりすることが可能です。
デメリットは、思い入れのある土地を手放さなければならないことですが、純粋に事業性を考えれば有効な対策手法の1つと言えます。
組み換えを考える場合、まずは資産の売却見込み価格を押さえるところから始めましょう。そのうえで、その売却価格と同等のものを買うのか、全部または一部を現金として残すのか、あるいは手持ちの現金を上乗せして売却額よりも高い物件を買うのか考えてみてください。
そして物件を選ぶ際には、賃料だけではなく、経費や空室率まで考慮することが必要です。そのうえで、より高い賃料を重視するのか、安定性を重視するのかはそれぞれの判断となります。
〈相続対策〉必要な対策に合わせ柔軟な対応が可能
相続対策という面では、相続人が複数いる場合は分割対策を考慮して複数の不動産に組み換えておくことが望ましいと言えます。また、納税対策としては、売却して現金化しやすい、つまり人気の高い物件に換えておくことが有効です。
さらに、節税対策を視野に入れ、高層マンションなどの建物比率が高く相続税の圧縮率が高い物件に組み換えることも検討できます。このように、必要な相続対策に合わせて、柔軟に購入先を検討できるのは資産の組み換えの大きなメリットと言えるでしょう。
なお、資産の組み換えの場合、短期間で実行できると考える方もいらっしゃいますが、必ずしもそうではないことにも注意が必要です。優良物件は購入希望者が多いため、希望する物件がすぐに見つからないことも少なくありません。
また、現在所有している不動産によっては、そもそも売却に時間がかかる場合もあります。その点も、売却見込み価格の査定などを行う際に併せて確認が必要です。
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さて、老朽化不動産の再生術として、「改修」「建て替え」「資産の組み換え(買い換え)」という3つの手法を3回にわたって解説してきました。これまでご紹介したことを踏まえ、どの対策手法をとるのかについて、ご家族で検討してみましょう。
とはいえ、すべての観点において満足がいく手法はなかなかないと思います。どの観点を優先するか、それぞれの観点の許容値はどの程度か、そうした視点を持ちながら判断していくことがポイントです。3つの対策手法の特徴を図表3にまとめましたので参考にしてみてください。
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なお、本コラムは三井不動産グループの資産経営情報誌「Let’s Plaza 2022.Autumn号」に掲載した記事を修正、改題したものです。「Let’s Plaza」(年3回発行)では資産経営に関する旬な話題や詳細な事例などを豊富に掲載しておりますので、ぜひ最新号よりご購読ください。