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“老朽化の危機”を“価値向上のチャンス”に変える! 築30年からの賃貸再生術 【第2回】

前回は、老朽化不動産のリスクと対策手法を検討する際の判断軸についてご紹介しました。今回からは、「改修」「建て替え」「資産の組み換え(買い換え)」という3つの手法について、「事業性」「相続対策」という判断軸から何をどう選ぶべきかを考えていきます。まずご紹介するのは、「老朽化不動産を何とかしなければならない」と考えたとき、多くの人が真っ先に思い浮かべる「改修」です。

記事作成日:2022年10月11日
記事公開日:2023年4月21日
記事改訂日:2023年4月21日

〈事業性〉コストと期待賃料のバランスが大切

一般的な改修には「原状回復工事」や「リノベーション」があります。
原状回復工事とは、賃借人の退去後に破損や汚れの修繕、劣化した設備の交換など、部分的な工事を行い、新たな賃借人に貸せる状態を目指すものです。いわばマイナスをゼロに近い状態に戻すための工事ということです。

それに対してリノベーションは、大がかりな改修を施し、建物に新たな機能や価値を加えることを意味します。つまり、従来よりも性能や価値を向上させるのがリノベーションということです。

改修の事業性におけるメリットは建て替えに比べて投資が少なく、工期も短くて済むという点です。一方のデメリットは中途半端な改修では事業性改善の効果が低いということです。

まず、原状回復工事は短い工期で対策ができますが、前述のようにマイナスをゼロの状態に戻すための工事なので、従前より高い賃料の設定は困難です。また、デザインや機能面では新築・築浅の物件にはかなわないケースがほとんどで、競争力の低下は免れません。そのため、コストに見合う経済効果が得られない可能性があります。

一方のリノベーションは、マーケットを見定めた計画を実施することにより、原状回復工事よりも競争力の向上が図れる点がメリットと言えるでしょう。例えば、最近は和室の人気が低いため和室を洋室に変える、コロナ禍でリモートワークが増えたことを考慮して書斎を設けるといった計画が考えられます。

当然ですが、リノベーションは原状回復工事よりもコストがかかります。また、仕様をどの程度のものにするかにより期待される賃料も変わってきます。リノベーションをしたからといって賃料が大幅に上がる保証はありませんので、周辺エリアの供給量や成約実績を把握しつつ、コストと期待賃料のバランスを考える必要があります。

原状回復工事とリノベーションのいずれの手法を選ぶにしても、注意すべきは資金の問題です。十分な手元資金がなければ、金融機関から改修費用を借り入れる必要があります。ただ、金融機関の融資期間は通常、法定耐用年数の範囲内が上限となることが多く、老朽化不動産の場合は短期の借り入れとなります。数年で完済を求められることもあるので注意が必要です。

また、工事の規模によっては入居者の立ち退きが必要となることもあります。その場合は、事業中の収入減少をどう補うかについても考えておきましょう。

〈相続対策〉改修は相続発生前に行うのが有効

次に相続対策の面から考えてみます。
改修では分割対策を行うことはできないため、複数の相続人がいて、かつ他に相続財産がない場合は分割対策をあらかじめ検討してください。例えば、共有を避けるために資産の組み換えを選択しようと考えるなら、改修をせずに売却するほうが得策ということも考えられます。

分割対策の方針が決まったら、改修工事の実施タイミングを検討します。相続税対策としては、改修は相続発生前に行うのが有効です。改修のための資金を残して相続を迎えると、その資金に対しても相続税が課税されてしまうからです。ただし、相続税の納税に必要な現金は確保しておきましょう。

改修としては、この他に「リファイニング建築®」という方法もあります。リファイニング建築とは、建築家青木茂氏が提唱した再生建築の手法です。既存躯体の約80%を再利用しながら、耐震改修や意匠転換、用途変更、設備一新などを行うことで建物の再生・長寿命化を図ることができるため、建て替えやリノベーションなど他の老朽化不動産対策の手法では実現できなかったさまざまなメリットを有しています。適用可能な建物に条件があるため本コラムでは詳細は省きますが、ご興味のある方は下記をご覧ください。

リファイニング建築について詳しく知りたい方はこちらから。
https://lets.mitsuifudosan.co.jp/anti_aging/refining

◆     ◆     ◆

次回は、「改修」「建て替え」「資産の組み換え(買い換え)」という3つの手法のうち、「建て替え」について詳しく見ていきます。お楽しみに!


(第3回に続く)
 

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