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“老朽化の危機”を“価値向上のチャンス”に変える! 築30年からの賃貸再生術 【第1回】

老朽化した不動産を今後どのように運用していくか――、これはなかなか難しい問題です。しかしその反面、的確な対策を選択・実行できれば、“不動産の老朽化の危機”は“不動産の価値向上のチャンス”にもなり得ます。そのためには、「改修」や「建て替え」「資産の組み換え(買い換え)」といった選択肢の中から、ご自身やご家族、不動産の状況に合わせて適切な手法を選ぶ必要があります。そこで今回は、主な老朽化対策手法のメリットやデメリット、適切な手法を選ぶ際の判断軸などについてご紹介していきます。

老朽化対策を検討するための判断軸❶ 事業性

このような老朽化対策の手法には、主に「改修」「建て替え」「資産の組み換え(買い換え)」があります(それぞれの手法については次回から詳しくご紹介します)。その中から自分やご家族、不動産の状況に最も適した手法を選択するためにはどうしたらよいのでしょう。それには、「事業性」と「相続対策」という2つの判断軸から考えることが有効と言えます。

まずは「事業性」という判断軸です。
老朽化不動産を改修する、あるいは取り壊して建て替えるにしても、多額の資金が必要となります。事業性の良し悪しを判断するには、投資により毎年いくら稼げるように改善するかを試算し、それが期待に沿う水準なのかを見極めることが重要です。

その際は、毎月の家賃収入がいくらかという「収入」だけではなく、各種経費を差し引いた後の「利益」で判断すべきです。経費としては、建物の維持管理費のほか、管理会社に支払う手数料、土地・建物にかかる固定資産税や都市計画税、将来の修繕費用の積み立て金などが考えられます。さらに、改修や建て替えの際に金融機関から借り入れをする場合は、返済金額や金利なども忘れてはいけません。

「利益」を考えるうえでは、経費以外にも空室率や賃料下落リスク、対策実施中に生じる無収入期間にも注意が必要です。空室率については用途・エリアにより違いがあります。また、過度に高い賃料設定をすると、それだけで空室率や賃料下落リスクが高まるでしょう。目先のことにとらわれるのではなく、長期的な利益で考えることが必要です。

そして、対策手法によっては入居者の立ち退きを伴うため、賃料が入らない無収入期間が発生します。その期間の生活費や固定資産税の支払いをどう賄うかについても十分に考慮しておく必要があります。こうしたさまざまな点に注意し、事業性を判断していきましょう。

老朽化対策を検討するための判断軸❷ 相続対策

もう一つの判断軸は「相続対策」です。「Let’s Plaza」でもたびたびご紹介しているように、相続対策には「分割」「納税」「節税」の3つの観点があります。相続対策と言うと節税対策ばかりが注目されがちですが、順番としてはまず分割対策や納税対策ができているかを確認しましょう。

分割対策をしなかった結果、例えば不動産が複数人の相続人による共有となり、将来の修繕や売却などの際に意思決定がスムーズに進まないといったトラブルにつながってしまう恐れがあります。今後どのように不動産を運営するかは、その不動産を引き継ぐ次世代の方たちにも大きく関係してきますので、ぜひ次世代の意見も聞きながら分割対策を練りましょう。

また、どれだけ節税をしたとしても、相続税を支払う現金が手元になければ、所有する不動産を手放して現金化せざるを得ない状況に陥ります。そのため、老朽化不動産の運用方法を考える際は、他の資産も踏まえながら、まず分割対策が問題ないか、次に納税資金を確保しているかを確認したうえで、最後に節税対策を考えることが大切です。

なお、対策手法によって要する期間も大きく異なるため、対策にかかる時間も考慮することが重要です。例えば、建て替えであれば、規模にもよりますが、検討開始から竣工までに3〜5年かかるでしょう。

被相続人の方がご高齢の場合は、対策にかかる手間や負担も判断の大きな要素となることが少なくありません。検討にあたっては、それぞれの手法が完了するまでにどの程度の期間を要するのかも押さえておきましょう。

◆     ◆     ◆

ここまで老朽化不動産のリスクと対策手法を検討する際の判断軸を見てきました。次回からは「改修」「建て替え」「資産の組み換え(買い換え)」という3つの対策手法について、「事業性」「相続対策」という2つの判断軸から見たときのメリット・デメリットを詳しくご紹介します。

 

(第2回に続く)

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