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知った人から得をする‼ 使える資産承継テクニック 【第4回】

「家族信託」「法人化」「資産の組み換え」という3つの資産承継テクニックのうち、これまで「家族信託」と「法人化」の2つをご紹介しました。最終回の今回は「資産の組み換え」を取り上げます。資産の組み換えといっても目的などによって多様な方法がありますので、ここでは主に不動産に関連した4つのパターンについてメリットや留意点などを解説していきます。

記事作成日:2022年7月11日
記事公開日:2023年11月9日
記事改訂日:2023年11月30日

※本記事は「記事作成日」時点の法令等に則って書かれています。

パターン1 「不動産」から「現金」へ組み換える

このパターンの主な目的は、分割対策と納税対策です。流動性の低い不動産を売却して現金に組み換えれば、分割と納税に柔軟に対応できます。ただし、現金は額面評価となるため、不動産を現金に組み換えると相続税が高額になることに留意しましょう。

しかし、不動産の種類によっては、時価のほうが相続税評価額よりも低いケースがあります。例えば、底地や別荘、無道路地、不整形地などがそれに該当します。相続税評価額は5,000万円であるのに対し、実際に売却すると1,000万円程度にしかならないような不動産です。

こうした不動産を子どもが引き継ぐと、同価値の現金よりも相続税の負担が大きくなります。そのため、将来的な有効活用が見込めない場合は、相続が発生する前に売却して現金化するのがお勧めです。相続税評価額が5,000万円から1,000万円に圧縮されるため、相続税の軽減が期待できます。ただ、こうした不動産は売却に時間がかかる可能性があることを考慮しておきましょう。

パターン2 「現金」から「不動産」へ組み換える

現金から不動産への組み換えには、例えば現金を用いて土地を購入したり、賃貸マンションを建設したりすることが該当します。
この場合のメリットはすばり、節税効果です。現金の状態で相続が発生すると、1億円の現金は1億円という額面で評価されます。しかし、1億円の現金を土地に組み換えた場合、土地の相続税評価は「路線価×面積」となり、路線価は公示価格の80%程度のため、相続財産を圧縮することができます。また、建物の相続税評価は固定資産税評価額となり、物件にもよりますが建築費用の60%程度となります。つまり、現金を土地に組み換えると1億円の相続財産が8,000万円程度に、建物に組み換えると6,000万円程度に圧縮されるということです。

さらに、建物を第三者に賃貸すると土地は貸家建付地評価が適用され、借地権割合次第ですが相続税評価額のおよそ8掛けとなるため、実質的に64%程度まで圧縮できます。一方の建物も貸家評価として相続税評価額からさらに30%評価減できるため、42%程度まで圧縮できるのです。

ただし、現金から不動産への組み換えは、流動性の高い資産から低い資産への組み換えになるので、現金が重要となる分割や納税には向きません。したがって、分割対策や納税対策をしっかり行ったうえで検討しましょう。

パターン3 「不動産」から「不動産」へ組み換える

このパターンは、利便性や収益性の向上が主目的となります。例えば、老後のことを考え、郊外の一戸建てを売却し、病院やスーパーなどが近隣にある都心のマンションに住み替えるといったケースが利便性向上のための組み換えにあたります。一方の収益性の向上については、所有している郊外の賃貸マンションを売却し、より高い収益性が見込める都心の賃貸マンションを購入するといったケースが該当します。

また、郊外の土地は、時価に比べ相続税評価額がそれほど下がらない傾向が見られます。一方、例えばタワーマンションなど都心にある不動産は、時価と相続税評価額の乖離が大きい傾向があります。そのため、郊外の不動産を売却し、都心のマンションなどに買い替えることで相続税評価額の圧縮も期待できます。ただし、駅に近いマンションは郊外の戸建てよりも相続税評価額が高くなる可能性もありますので、事前にプロにシミュレーションしてもらいましょう。

さらに、不動産から不動産への組み換えは、分割対策としても有効です。例えば、1棟で1億円の賃貸不動産を売却して、1戸5,000万円の賃貸マンションを2戸購入し、子どもたちに1戸ずつ相続させるという方法も考えられます。

子どもたちは会社勤めで不動産オーナー業は難しいという場合は、サブリース契約という方法もあります。サブリース事業者への手数料はかかりますが、事業者がオーナーから賃貸物件を一括で借り上げるため、管理の手間がかからずに一定の賃料収入が見込めるというメリットがあります。

パターン4 「土地の一部」を「建物」に組み換える

最後は、土地の一部を建物に組み換える、いわゆる「等価交換」についてご紹介します。
これは、自身が所有している土地をデベロッパーに譲渡した後、デベロッパーがそこにマンションなどを建築し、その土地の価値に見合う区分所有マンションを受け取るというものです。不動産オーナーにとっては、コストを負担することなく、新しく建築された区分所有マンションを手に入れることができます。

また、土地の評価額にもよりますが、新しく建築されたマンションのうち複数戸を受け取ることができれば分割対策にも役立ちますし、納税対策で現金が必要になった際は1戸だけ売却して現金化することも可能です。

留意点としては、デベロッパーとしても残りの住戸を分譲して収益を得る必要があるため、立地や面積などの条件から等価交換が可能な土地が限られるということです。また、デベロッパーに土地を譲渡し、そこにデベロッパーが新たにマンションなどを建築して等価交換が完了するまでには、少なくとも3年程度の期間が必要です。

そのため、特に不動産オーナーが高齢の場合は等価交換ではなく、土地を売却して別の土地のマンションなどを購入する、いわゆる不動産から不動産への組み換えという選択肢が適していることもあります。

ここまでで4つのパターンについて解説してきましたが、前述のように資産の組み換えには目的に応じてさまざまな方法がありますので、実行する際にはぜひプロに相談しましょう。

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「家族信託」「法人化」「資産の組み換え」という3つの資産承継テクニックについて、詳しくご紹介してきました。円滑な資産承継を実現するために、こうした制度やテクニックを上手に活用していただきたいと思います。本サイトではこれからもオーナー様の資産経営に役立つさまざまな情報を発信してまいります。

なお、本コラムは三井不動産グループの資産経営情報誌「Let’s Plaza 2022.Summer号」に掲載した記事を修正、改題したものです。「Let’s Plaza」(年3回発行)では資産経営に関する旬な話題や詳細な事例などを豊富に掲載しておりますので、ぜひ最新号よりご購読ください。
 

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