資産経営に差がつく、骨太“法務”塾

土地の筆界の位置を特定する制度について

情報誌レッツプラザ2026年Spring号より引用

〈今回のテーマ〉境界問題を解決に導く「筆界特定制度」とは?

Q 他府県に1人で住んでいた父が亡くなり、実家である土地建物を相続することになりました。実家に赴いて土地建物の状況を確認したところ、隣地との間にブロック塀はあるものの境界を示す境界杭がないため、父の土地はブロック塀の内側までか、外側までか、あるいはブロック塀の中心線までかがわかりません。隣地の方は「ブロック塀の外側までが自分の土地だ」と主張しますが根拠は不明です。このような状況で土地の境界を確認する方法はあるのでしょうか。

隣地所有者との協議が問題解決の第一歩

ご質問のように、相続した土地の境界線上に境界杭が埋設されておらず、どこまでが相続した土地なのかが不明確なケースは少なくありません。

こうした境界の問題を解決するためにまずすべきことは、隣地所有者と境界線の位置についてきちんと協議を行うことです。当事者間の協議の際には、下記❶~❹のうち用意できるものを準備して、現地で当事者双方がともに認識している土地の形状と資料を比較し、境界の確認・協議をしましょう。

❶公図、❷地積測量図、❸昔の写真、❹境界確認合意書

❶と❷は、自分の土地と隣地の登記で作成されているものを法務局から取り寄せることができます。
❷は作成されていない土地もあるため、早めに有無を確認しておくとよいでしょう。
また、境界杭は設置されていなくとも、その昔に隣地所有者と境界線の位置について確認・合意した「境界確認合意書(❹)」が存在している場合は、境界確認合意書に基づき境界杭を設置することについて、隣地所有者と改めて協議し解決を図ることも可能でしょう。

なお、当事者間で合意した「所有権の範囲を示す境界」とは別に、「公法上の境界」と言われるものがあります。それが「筆界」です。
筆界は登記により定められたもので、分筆や合筆、裁判所の確定判決がない限り、変更されることはありません。そのため、当事者間で取り交わす境界確認合意書は、所有権の範囲についての合意書と解されています。その境界確認合意書のみをもって筆界が変更されるのではないということも知っておくとよいでしょう。

速やかに境界を確認できる「筆界特定制度」

当事者間での協議が決裂した場合はどうすればよいのでしょうか。2005年までは裁判所に境界確定裁判を提起し、判決によって確定する以外に法的な手段はありませんでした。
しかし、2006年1月以降は行政手続きでより速やかに境界を確認できる「筆界特定制度」が創設されています。
この制度では、土地の所有者として登記されている者などの申請に基づき、法務局または地方法務局の筆界特定登記官が、外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえ、現地における土地の筆界の位置を特定します。

ただし、この制度は筆界を「特定」するものであり、筆界を「確定」するものではありません。
相手方が筆界特定の結果に納得せず、境界確定裁判を起こし、筆界特定とは異なる判決が確定した場合は、その筆界特定は効力を失い、判決による境界が有効となります。
しかし、前述のように筆界特定は専門家が現地で測量を行いますので、高い信憑性があります。そのため、境界確定裁判において、これを覆す証拠が提出されない限り、筆界特定の結果が認められる可能性は高いと考えられます。ゆえに、この制度を利用することは十分に意味のあることだと思われます。

相続をきっかけに境界の問題が表面化するケースは少なくありません。また、境界の協議は過去の経緯を把握している所有者が行ったほうが円滑に進むと考えられます。相続が発生する前に境界を確定させておくことをお勧めします。もしすでに筆界特定が必要となっている場合、本制度は手続きに時間がかかるため、早めに対応するのがよいでしょう。
不安を感じる方は、資料などを確認のうえ弁護士などの専門家に相談してみてください。

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