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資産経営に差がつく、骨太“法務”塾

賃貸住宅を経営する際の注意点やポイントは?

情報誌レッツプラザ2024年Spring号より引用

〈今回のテーマ〉不動産投資に際して知っておきたい法律知識

賃貸住宅への投資を考えています。法的に留意すべきことや契約書に必ず盛り込んでおくべきことはありますか。

賃貸住宅事業をするにあたっては入居者と建物賃貸借契約を締結しますが、契約には「民法」の賃貸借の規定と「借地借家法」の建物賃貸借の規定が適用されます。これらの規定の中には、当事者同士が合意したルールでも、法律の定めと異なるという理由で無効になる事柄があります。また、何も定めなかった場合は法律の規定が適用されるため、そうならないよう事前に検討しておくべき事柄があります。以下に詳しく見ていきましょう。

連帯保証人が個人の場合は、必ず賃貸借契約に「保証の上限」を

賃貸借契約を締結する際は、入居者が賃料を支払わない場合でも代払いしてくれる賃貸保証会社をつけることが多いと思います。しかし、もし連帯保証人として個人と保証契約を結ぶ場合は文言に注意が必要です。

以前は「丙(連帯保証人)は、乙(賃借人)の甲(賃貸人)に対する債務を乙と連帯して支払うものとする」との条項を使っていましたが、2020年4月1日施行の改正民法では、保証人が個人の場合は「極度額(保証の上限額)」を書面等で合意していない保証は無効と定めています。「丙は、乙の甲に対する債務を極度額○○○円の範囲内で乙と連帯して支払うものとする」というように、「極度額○○○円(一般的には賃料の1~2年分程度)の範囲内で」との文言を付加しておきましょう。

何も定めておかないと、修繕費や原状回復費用がすべて貸主の負担に

修繕費や原状回復義務に関しても注意が必要です。民法では修繕費は賃貸人の負担(ただし、賃借人の善管注意義務違反によって修繕が必要となった場合は賃借人の負担)と定めています。そのため、特段定めがない場合は、修繕費はすべて賃貸人の負担となります。

しかし、建物躯体に必要な修繕費は賃貸人、その他の設備は賃借人の負担とする合意も有効と解されていますので、修繕費の負担区分を定め、契約内容に入れておくことも考えましょう。

また、民法では賃借人が通常の使用をした際に発生する建物の損耗(国土交通省による定めあり)は、賃貸借が終了した時点での賃借人の「原状回復義務」に含まれないとしています。そのため、何も定めていない場合、畳表の日焼け、床カーペットや壁クロスの通常の汚損、ルームクリーニング費用などは原状回復として賃借人に請求することはできません。

そうした事態を避けるためにも、事前に原状回復負担区分を具体的に定めて契約書に記載するとともに、入居時点での原状(その部屋の状態)を記録して保存しておきましょう。

サブリースを考える際は事業者の実績や契約内容をしっかり確認

次に、賃貸物件の管理に関する留意点について見ていきます。管理を事業者に委託する場合は、事業者とサブリース契約を締結することがあります。その際、事業者から「○○年間、家賃保証」の提示をされることも多いと思います。しかし、サブリース契約は法的には建物賃貸借契約であるため、事業者は契約期間中であっても借地借家法に基づく賃料減額請求をすることが認められています。

つまり、家賃保証とは、必ずしも当初の契約締結時の家賃をずっと保証するものではないということです。逆に、当初の査定金額よりも高く貸せた場合は賃料改定時に送金額を上げるという契約をしている事業者もありますので、見極めが重要です。また、事業者との間でサブリース契約を締結した場合、事業者は建物の賃借人となり、借家権を有しています。

そのため、事業者とのサブリース契約を解約する場合は正当事由が必要とされ、正当事由を満たしていない場合は立ち退き料の支払いが必要となるケースもあります。サブリース契約を考える際は各事業者の実績や評判をよく調べ、また自分がどのような契約をするのか必ずチェックしましょう。

東京大学法学部卒業。弁護士(東京弁護士会所属)。最高裁判所司法研修所弁護教官室所付、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員、民事訴訟法改正問題特別委員会副委員長、NHK文化センター専任講師、不動産流通促進協議会講師、東京商工会議所講師等を歴任。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事。

海谷・江口・池田法律事務所

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