資産経営に差がつく、骨太“法務”塾

返済の心配なく、老後の生活費を確保する方法は?

記事作成日:2024年1月10日
記事公開日:2024年3月31日
記事改訂日:2024年3月31日

〈今回のテーマ〉セカンドライフの資金調達のための法律知識

充実したセカンドライフを今の自宅で送りたいと思っていますが、その間にかかる生活資金が心配です。自宅を抵当に入れて金融機関から借り入れをすることも検討しましたが、元利金の返済ができそうにありません。それ以外の方法で、自宅に住み続けながら生活費を確保する方法はありますか?

存命中は返済の心配なく生活費を確保したい――。そうした場合に考えられる、自宅を利用した2つの資金確保の方法をご紹介したいと思います。

存命中は利息のみの返済でよいリバースモーゲージ

1つは「リバースモーゲージ」です。これは、自宅を担保に金融機関から借り入れをし(融資は定期的・一括どちらも可)、存命中は毎月利息だけを返済し、元本は死亡後に自宅の売却代金で返済する(相続人が手元資金で一括返済することも可能)方法です。存命中の経済的負担が軽く、自宅に住み続けることができます。ただし、以下には留意が必要です。

❶相続人全員の同意が必要
本来ならば相続財産となる自宅が相続開始により売却されるため、あるいは自宅の売却代金で全額返済できない場合は相続人の負担となる可能性があるため、契約に際し多くの金融機関が推定相続人全員の同意を求めます。推定相続人とは、現時点で相続が発生した場合に相続人となる可能性が高い人です。

❷資金使途が限定される
リバースモーゲージは老後の生活資金の確保を目的としたものが多く、金融機関によっては融資金の使い道を限定している場合があります。

❸マンションは対象とならない場合が多い
担保対象となるのは主に土地で、建物は担保としては評価しにくいためマンションは対象外となる場合が多いようです。

❹融資限度額の制限がある
契約内容にもよりますが、通常は融資限度額が設定され、それを超えると融資が途絶えます。融資をローン返済に充てている場合などは存命中に限度額を超えないか、注意が必要です。

❺契約期間が設定される場合がある
元本は死亡後、自宅の売却費用で返済するのが一般的ですが、契約期間(最終返済期限)を設定する場合もあります。存命中に契約期間が終了してしまった場合は、元金の返済が必要です。


自宅を売却後に貸借するセールスアンドリースバック

もう1つは「セールスアンドリースバック」です。これは、自宅を買主に売却(セールス)し、売却後に買主から自宅を賃借(リースバック)する方法です。売却資金を得つつ自宅に住み続けることが可能で、自宅の売却を周囲に知られにくい点も特徴です。リバースモーゲージと比較すると、①推定相続人の同意が不要、②資金使途に制限がない、③マンションも対象となる、④相続人に返済の負担がないなどの利点があります。ただし、以下には注意が必要です。

❶リースバックの期間が限定されている
リースバックの期間は2~3年が多く、一般的には定期建物賃貸借契約です。再契約できるものもありますが、長期間の賃貸が可能か否かは契約時に個別に確認する必要があります。

❷自宅の取引価格は相場よりも低いものが少なくない
売主の継続利用が前提で、買主が自由に活用できないため、相場より取引価格は低くなることが多いです。
❸賃料は相場よりも高くなる傾向
売主の便宜を考慮しての賃貸借という背景から、家賃は相場より割高に設定されることが多いと言えます。

老後の生活資金の確保については、さまざまな方法があります。いずれも個別の契約により内容が異なりますので、契約書をしっかりと確認することが大切です。

東京大学法学部卒業。弁護士(東京弁護士会所属)。最高裁判所司法研修所弁護教官室所付、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員、民事訴訟法改正問題特別委員会副委員長、NHK文化センター専任講師、不動産流通促進協議会講師、東京商工会議所講師等を歴任。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事。

海谷・江口・池田法律事務所

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