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終の住まい選びと資産活用法

人生100年といわれるほど、かつてなく余生の長い時代が到来しています。長寿は喜ばしいものの、それだけ老後の住まいや資産についてしっかりした計画が必要です。そこで、今回は終の住まい選びと、その際の資産活用法についてお話しします。

記事作成日:2022年10月10日
記事公開日:2023年4月24日
記事改訂日:2023年4月24日

所有する賃貸マンションやビル、アパート等をオーナー様ご自身が管理している場合、加齢に伴って体力や気力が低下してくると修繕やテナント対応などが行き届かず、不動産価値の目減りにつながるケースがみられます。そうならないためにも、年齢を重ねたときに所有・管理する不動産をどのように活用・整理していくのか、事前に検討しておきたい課題です。

終の住まい選びや
資産整理に要する時間を考えて準備を

では、何歳ぐらいから検討を始めたらよいのでしょう。できれば60代後半のまだまだ元気なうちから、ライフプランや相続計画を基に、今後の不動産の活用・整理について考え始めていただきたいと思います。

特に一人暮らしのオーナー様の場合、管理業引退後は自宅を離れ、高齢者施設へ入居したいという方も多くいらっしゃいます。しかし、ご希望に合った施設がすぐに見つかるとは限らず、見つかっても人気が高い施設は入居待ちが生じ、ご入居まで数ヵ月~数年かかることもあります。

資産を整理したり、承継したりするにも時間を要します。特に最近は賃貸用不動産の増加による競争過多から不動産経営の難易度も上がり、ご相続人様が不動産の承継を望まないケースも多いため、あらかじめ分割しやすい資産に組み換えておくことも一案です。現在の良好な不動産市況であればそれほど問題はありませんが、状況によっては不動産を売却しようにも買い手がなかなか見つからない場合もあります。

また、不動産を売却せずにお子様や親族へ承継するにも、分割などの相続対策について時間をかけてしっかり検討しないと後々の“争族”の種になりかねません。

このように、終の住まい選びも不動産の整理・承継も時間的な余裕が大切です。万が一、その間に脳梗塞や認知症などを発症し、意思疎通が難しくなってしまったら、受け入れられる高齢者施設が限られるため最良の選択ができず、またご自身が希望する形で資産の整理・承継を行うことが困難になる可能性も高くなります。こうした事態を回避するためにも、早めにご検討を始めてはいかがでしょうか。

受け継いだ資産を形を変えて将来に活かす

次に施設入居という選択肢を軸に、不動産をどのように整理すればよいか、事例から考えてみましょう。

ケース1

都市部に築30年の自宅兼賃貸ビルを所有している会社経営者のA様(70代・男性)。奥様とは死別し、お子様はおらず、ご自身で居住もしているビルの管理を行いながら一人暮らしをしていましたが、元気なうちに老後の生活の筋道をつけておきたいと施設への入居を決断されました。

A様は転居を機に、今まで行っていた管理業務もやめて、不動産を売却したいとのことでした。弊社では施設のご提案を行いながら、不動産の状態や市況をみて売却額や大まかな売却スケジュールを提案し、それを基にA様のご要望に沿って転居スケジュールの調整を行いました。

かなりの築年数を経ていたにもかかわらず不動産の状態がよかったのは幸いでしたが、障壁となったのは賃貸契約内容や更新状況が明確でないテナントが入居していたことでした。そこで弊社では個々の契約内容を精査するとともに、書類も可能な限り整理するなど事前準備に注力。このようにご所有不動産の内容をしっかり把握することが、不動産価値の向上につながるのです。

こうして不動産価値を最大化したうえで買い手を探した結果、スケジュール通りに、かつ想定よりも高価で売却することができました。A様からは「迅速に進めてくれてありがとう。転居先もスムーズに決まり、売却価格にも満足しています」とのお言葉をいただきました。

ケース2

亡夫が建てた築25年の自宅兼賃貸住宅で一人暮らしをされているB様(70代)。他にも複数の収益不動産を所有していましたが、管理業の煩わしさやご自身の体力を鑑み、施設入居を前提に不動産の整理を決断されました。

B様にはご親族がいますが、すべての不動産の管理を任せるのは難しいと判断。現金資産には余裕があり、亡夫が建てた建物に愛着もあったため、「まだ早いかな」というお考えもあったそうですが、将来のことも考えてご親族が承継されるもの以外の不動産を売却することに決めました。

ご親族が建物内を使用貸借しているなど関係者のご納得に時間を要しましたが、最終的には納得いただける価格で売却でき、施設への転居もスケジュール通りに実現。B様は「早めに行動に移したからこそ、関係者の調整がしっかりできて本当によかった」とおっしゃっていました。

◆    ◆    ◆

弊社にご相談を寄せられるお客様の中には、ご所有している不動産が理想とするライフプランの実現を妨げてしまうケースもあります。昨今は不動産を所有するリスクや手間が多くなってきており、負担を感じながらも「先代から受け継いだものを自分が手放してはならない」と所有し続ける方もいらっしゃいます。

しかし、不動産という「モノ」に縛られ、ご本人が大変な思いをするのは先代も望んでおられないのではないでしょうか。受け継いだ資産を本当に活かすには、「資産の形を保つことにこだわる」のではなく、「ご自身や次世代の方に最適な形に変えて活用する」のも有効な選択肢の一つであると思います。

実務的な面でも、またお気持ちの面でも、お客様の負荷をできるだけ減らしつつ、大切な不動産の価値を最大化することが私たちの責務だと自負しております。気になることがあればぜひお気軽に、そしてお早めにご相談ください。お客様のご意向に寄り添いながらベストを尽くします。

三井不動産リアルティ株式会社
ソリューション事業本部

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