投資の考え方がグローバル化した現代では、投資家は日本に限らず、様々な投資をすることができます。
不動産に関して言えば、世界的な投資家は、幾つかの判断基準に照らし合わせてグローバルな視野で投資物件を決定します。
・カントリーリスク(自然災害・政治的安定性など)
・マーケット透明性
・ボラティリティ(振れ幅、利益・損の想定)
・成長性
・為替動向
・賃料動向 その他
しかしながら、このような総合的な判断は一般の投資家にはできません。
なぜ、こんな話をしたかというと、「世界的な投資家」がターゲットにするような不動産を選ぶことができれば投資の成功確率がアップするからです。なにも海外不動産への投資をおすすめするわけではありません。日本国内で、海外投資家が目を付けそうな物件を選べば良いのです。
ひとつの考え方の例として東京を基準(100)とした2つの指標を見てみましょう。
高級マンション価格指数
これは、ハイグレードマンションの価格を東京を100として指数化したものです(図1参照)。香港が非常に高いことが目につきますが、これは、香港の地政学的特徴によるもので、開発できるエリアが著しく限られていることに起因します。香港・ロンドンを別にすれば、東京の価格水準が高いことがわかります。 このなかで大阪は、東京の60%弱の価格水準となっています。
高級マンション賃料指数
こちらを見るとニューヨークやロンドンの賃料が非常に高いことがわかります(図2参照)。反対に、上海や台北は価格の割に賃料がそれほど高くありません。そして、大阪の賃料指数は東京の80%ほどになっています。
東京 価格 100 賃料 100
大阪 価格 57.0 賃料 78.8
仮定の話になりますが、東京で1億円の物件の賃料が年間400万円、同じ広さの物件が大阪では、5,700万円で購入でき賃料が年間315万円入るということになります。
この指標だけで投資先を選ぶということではありませんが、この指標を見る限り、マンションに投資をする場合、東京に比べて大阪の投資効率(利回り)が良いということに繋がります。
東京・大阪について書きましたので、大阪のマーケットについて少し触れておきましょう。
大阪のマーケット
1991年のバブル崩壊以降、在阪の大企業の本社機能は東京へ移転することになります。それによって大阪のオフィスマーケットは冬の時代を迎え、不動産マーケット自体が、外からの需要が少ない非常にドメスティックなマーケットになってしまいます。
ところが、観光立国政策によって、大阪にも多くの観光客が押し寄せることになります。
大阪万博誘致・IR誘致など「新しい大阪」を目指す方向性や、大阪駅北ヤードのような「大規模都市再開発」による変化は、投資家にとって興味深いところです。
投資すべきエリアは限定的
プロの投資家が国内の不動産に投資する場合にどの都市を選ぶのか? その際に彼らが考えるのは、都市のポテンシャルと個別物件のポテンシャルです。単に利回りが高くても都市や物件のポテンシャルが低ければ投資としての安定性に不安があります。
ですので、東京圏のように市街化集積地がいくつもある都市は例外として、インバウンドも含め、プロの投資家が購入を希望するエリアは、「大都市の中心部およびその周辺」が多くなります。
特にオフィス・商業系ビルや分譲マンションに投資をする場合は、市街地のコアエリアを外さない方が賢明でしょう。
また、アパート等の賃貸住宅についても、各大都市への通勤圏内を外さないほうが無難です。賃貸需要が限定される郊外部の案件は賃貸収入の安定性に不安要素があるからです。
いずれにしても賃貸需要が将来にわたって安定的であるか否かが投資物件を選ぶ際には重要なファクターになります。
不動産投資は安定収入を得ることがひとつの目的です。プロの投資家が目を付けそうな物件を、利回りだけでなく、物件周辺のエリアや都市の特性や成長性、賃貸市場の安定性、個別物件の特性などから総合的に判断し、先を見据えた投資物件の選択を考えてください。
※本記事は2020年10月に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。
関西支店 ソリューション営業部長
三井不動産リアルティ株式会社
神宮 保彦