知っておきたい不動産の話

あなたの不動産の「稼ぐ力」を見極めるための、基本3ステップ

不動産を評価する際の基本的な判断手法に「収益還元法」という考え方があります。その不動産にどれだけ稼ぐ力があるのか、つまり不動産の収益性に注目して評価を算出するものです。この考え方をベースに不動産の棚卸しをする手順を、少しわかりやすく、角度を変えて見ていきましょう。

「働く不動産」とは

「働く不動産」として、まず思い浮かぶのは賃貸マンションやアパートなど賃貸用の建物ですね。建物を賃貸することで毎月「賃料」という形で収入を得ることができます。そのほかにテナントビルや貸店舗、駐車場や貸地などもこれに当てはまります。またご自身が事業用に使用している店舗や事務所なども働く不動産であると考えられます。

 

一方「働かない不動産」とは、所有しているだけで収入を得られていない不動産のことです。例えば、空き地や空き家、特に収入を生んでいない山林のほかに、あえて自宅や別荘もこちらに分類します。

「働く不動産」がちゃんと働いているか?

働く不動産には「良く働く不動産」と「あまり良く働かない不動産」があります。立地にもよりますが土地・建物の実勢価格に対して5%程度以上の利回りに相当する収入が得られていればまずまず合格点だと言えます。また、土地を有効活用してアパートなどを建てる場合には建築コストに対して10%以上の利回りに相当する賃料が見込めなければ効率的な事業とは言えません。建築コストが高止まりしている昨今ではより効率的な計画が必要です。

不動産にも天職がある

土地にはそれぞれ最適な用途があります。オフィス立地、住宅立地、店舗立地などで、これは土地のサイズや形状などによっても変わってきます。また時代の変遷によって最適用途が変わってくることもあります。

30年前に住宅開発ブームの波に乗って郊外の駅前で店舗・事務所兼用のビルを建てたとします。当初一階にはスーパーマーケットが入り、事務所部分も拡大する需要を当てにしたテナントで、すぐに満室になりました。ところが最近では小売店舗の大型化・複合化の影響を受け当初入ったスーパーは撤退、オフィス部分もリストラの波を受けテナントが抜けていきます。その後、店舗はテナントが入っても長続きせず、オフィス部分は賃料を下げても半分程度しか埋まらない状況になってしまいました。 「ここは住宅需要しか見込めないからいっそのこと賃貸マンションに建て替えたらいかがですか?」

営業マンのそんな声が聞こえてきそうですが、少し待ってください。
提案されている事業計画を良く見てみましょう。建築コストに対する賃料の利回りは10%以上ありますか? 修繕・設備の入れ替えのコストなどが見込まれた事業計画になっていますか? 賃料の下落率をある程度見込んだものですか? そうでないとしたら、やるべきではないかもしれません。

ではどうするのか?

まずは現状の建物を活かして利用することを検討しましょう。シェアハウスや優良老人ホームなどに転換できるとすれば、かなり低コストで新たな賃貸事業が再生されるかもしれません。現状の建物を活かした事業が難しい場合には、更地にして時間貸し駐車場にしてはいかがでしょう。建築費の資本投下無しで安定賃料が入り、租税公課以外のコストや管理の煩わしさがないので、リターンは大きくないですが検討の余地がありそうです。

いずれも難しそうなときにどうするのか。どうやっても良く働かない不動産の最も効果的な活用方法は「組み換え」です。「働き者の不動産」に買い換えることを検討してください。

「働かない不動産」について考えてみる

「働かない不動産」は、「働けない不動産」と「働けるのに怠けている不動産」に分類できます。

前者で、ご自身やご家族があまり利用していない場合には早めのご処分をおすすめします。

後者の場合で、効率的な事業計画が想定でき、資金的にも無理が無いようならば前向きに考えるべきです。また「働ける不動産」ならば比較的良い値段で売れるはずなので、資金の問題で二の足を踏んでいるようであれば、追加投資をせず、売却資金でほかの「働く不動産」に組み換えるのも良い方法です。

要約していますが、今回の内容は「不動産の棚卸し」手法の根本的な考え方です。ご自身の不動産ポートフォリオを最適化するためにもぜひご検討のうえご相談ください。

※本記事は2016年6月号に掲載されたもので、2021年12月時点の法令等に則って改訂しています。

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