不動産投資における「リスク」
そもそも、不動産投資における「リスク」とは何でしょうか。それは「不動産価格やキャッシュフローを減少させる可能性」です。その可能性が大きければ大きいほど、「リスク」が高いと言えます。
では、不動産投資における「リスク」とは具体的にどのようなことがあるのか整理してみましょう。大きく次の4つに分けられそうです。
➀ 個別不動産のリスク
これは個別不動産自体の欠陥や瑕疵によるもので、対象不動産ごとに内容は様々です。具体的には、建物の遵法性、土壌汚染、アスベスト、耐震性能などの物的なもののほか、差し押さえ、抵当権などの権利的なものもあります。また、テナント退去などの想定外の空室・費用の発生や、自然災害により受ける被害等もリスクとして考えられます。
➁ マーケットリスク
これは世の中の景気や市場の変化・落ち込みなど、いわゆる外部環境要因です。不動産市場だけでなく、株式市場、金融市場などの動向からも影響を受ける可能性があります。
➂ ファイナンスリスク
主に金利上昇による影響で返済額が増え、キャッシュフローを悪化させることです。借り換えの際に、返済条件が悪化してしまう可能性も含みます。
➃ その他のリスク
主に税制、会計基準、法律などの変更に起因するものです。もし所得税や減価償却費などの基準が変われば、それは直接的に収支に影響を及ぼします。また、建築基準に関する法規制などの変更があれば、建替え時に同程度の建築ができなくなり、不動産価値を下げる可能性もあります。
「リスク」をコントロールする
では、これらのリスクをコントロールする手法にはどのようなものがあるでしょうか。不動産投資の流れの中で考えてみます。
➀ 物件取得時
物件を取得する際、まずは『物件調査―デューデリジェンス』が重要となります。前述の個別不動産の瑕疵を発見し把握することができれば、あらかじめ購入価格等に反映させることもできますし、自然災害時に大きな影響を受ける可能性がわかれば、事前に耐震補強工事の実施や保険へ加入するなどでリスクに備えることができます。このように物件取得時では、専門的な視点で物件を調査できる不動産仲介会社の能力が重要となります。
また融資についても固定金利と変動金利の借入割合を工夫し、金利が低いうちは固定分を、金利が上がってきたら変動分を優先的に返済していく、などの方法も検討します。融資に関しては、金融機関の担当者が重要な役割を果たします。
➁ 保有・運用中
保有・運用期間中は、常に『不動産マーケットや金利変動を把握』することが重要です。賃借人ニーズの変化に応じて早めに間取りの変更や設備のリニューアルを進めることで、空室を防ぐことが可能となりますし、不動産価格の下落を予想できれば、大きく影響を受ける前に売却することも可能です。
また、常に確認しておきたいのが『法改正などの情報』です。税制等は税理士など専門家から情報提供とその対応をしてもらうほか、ご自身でも各種セミナーやニュースなどで情報収集を欠かさないようにします。そして最も重要なことが『建物の適正な管理を維持』していくことです。管理のクオリティを保つことは、直接的にテナントの満足度を高めることにつながり、想定外の退去やクレーム、事故等の発生を防ぐ効果もあります。経験や能力の高い建物管理会社の選択が重要と言えます。
➂ 売却時
売却時には主に『マーケットの読み』と『買主選び』が重要と言えます。好機を見逃すと、無駄に売却期間が長期化したり、価格下落を生むこともありますので、短期的な動きに加えて不動産市場の大きなサイクルを見通す経験と知識を持ったアドバイザーの存在が非常に大切になってきます。後者は、買主選びを間違うと、契約後に予想外のトラブルやクレームを生む場合があります。購入条件が良くても、結果的に融資不調により白紙解約になってしまったり、クレームやトラブルの解決に予想外の費用や時間が掛かることもあります。
このように、様々な場面で各分野のプロを上手に利用することで、不動産投資に伴う様々なリスクのコントロールが可能になり、検討できる収益不動産の幅も広がってくるはずです。
※本記事は2017年6月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。
三井不動産リアルティ株式会社 ソリューション事業本部コンサルティング営業一部
岡本 良保