用語クローズアップ

リノベーションとコンバージョンの違いと今後

毎年新たに賃貸住宅やオフィスビルの供給が進み、空室率や賃料水準は優勝劣敗の様相を呈しています。稼働率や収益性が落ちつつある物件を抱えたオーナーにとっては、なんとかして資産価値を回復し、収益性改善を図らねばなりません。そのための手法のひとつとして注目される「リノベーション」と「コンバージョン」について解説します。

「リノベーション」と「コンバージョン」の違いとは

賃貸事業経営をしている、または賃貸事業を引き継いだ場合、資産の老朽化に対して適切な対応をおこなっていくことは、安定した経営をより長く継続していくうえで欠かせない大事な作業です。また、その老朽化に対する方法を選択する際、様々な状況からどのような手法を選択すべきか経営判断を求められます。

老朽化に向き合う場合の一般的な選択肢としては「建替え」「売却」「リフォーム」がありますが、その「リフォーム」において、単なる修繕・改装といった原状回復にとどまらず、既存の建築物を最大限に有効活用し、新たな価値を付け加える方法として「リノベーション」と「コンバージョン」という手法が用いられます。2つの用語は同類語でありながら同意語ではなく、今までの単なる「リフォーム」というカテゴリーに留まらず、昨今では建築的手法として周知されてきたこともあり、ここでその違いを比較、整理してみます。

まず、「リノベーション」ですが、今ある建物の用途を変えないまま価値を再生する(そのまま付加価値を加える)。一方で「コンバージョン」は用途を変更することで価値を再生する(倉庫→賃貸住宅、銭湯→デイサービス施設に変更)場合に用いられます。どちらの手法を選択する場合でも、事前の入念な調査と相応の時間やコストを要し、賃貸事業の大きな転換期となることから、不動産の市況を注視しつつ、変わってゆく社会環境はもちろん、資産の状況を把握することが何よりも大事です。

リノベーションについて

リノベーションを選択する要因について賃貸住宅を例にすると、 ①駅や大学、専門学校、企業の工場等からの距離が近く、中長期的に賃貸ニーズが見込める。 ②周辺のライバル物件に空きが少なく家賃相場が安定している。 ③デザインの古さや設備の老朽化が要因となり、稼働率が落ちているなどがあげられます。こうしたニーズや立地には問題がなく、老朽化を解決することで収益性を上げられる場合に「リノベーション」が効果的です。

具体的には、競合物件には無い特長やアイデア(明るく上質なエントランスや電動アシストサイクルを出し入れしやすい駐輪場など)を取り入れたりすることで収益性を改善させます。また、空室となっている部屋から順に工事を進めていくいわゆる「順送り方式」と呼ばれる方法で費用と休業リスクを最小限に抑えることも場合によっては検討可能です。

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