土地資産家のための税務講座

相続財産の共有が招く“悲劇”を回避する、5つの解消法

遺言書のない相続については、相続人全員による話し合いで財産の分け方を決めなければなりません。これを「遺産分割協議」と言い、この手続き自体に法的な期限はありません。ただし、相続税が発生する場合には、原則として10か月という申告期限が切られます。つまり、この期限内に話し合いがまとまらなければ、「未分割」として、望ましくない「共有」の状態になってしまうのです。それでは、共有の何が問題なのか、そして、それを解消するにはどうすればよいのか、改めて「不動産の共有」について考えてみましょう。

共有を回避するための予防策

以上、今まで見てきたように、共有を解消する方策は確かにあるのです。しかし、基本的には他の共有者の協力が必要であることもおわかりいただけたのではないでしょうか。逆に言えば、その協力が得られない場合、共有状態を解消することも、また困難なものになるということなのです。

それでは、“とりあえず共有”にしないためにはどうしたらよいのでしょうか。それは、相続にあたって財産を分割するのを、分割する当事者に任せないということなのです。つまり、生前に遺言書を作成し、財産の分割方法をあらかじめ指定しておくことなのです。ご自分の財産であるからこそ、それをどのように相続させるのか、その方にすべての決定権があることを、肝に命じて欲しいのです。それこそが財産を所有する方が、次代に引き継がせるための責務なのではないでしょうか。

※本記事は2019年1月号に掲載されたもので、2022年1月時点の法令等に則って改訂しています。

税理士。昭和27年生まれ。早稲田大学教育学部卒。税理士法人エーティーオー財産相談室代表社員。国税専門官として税務調査を10年強経験後アーンスト&ヤング会計事務所、タクトコンサルティングを経て独立。経験を生かした資産税のスペシャリストとして活躍中。著書に『相続に強い税理士になるための教科書』『相続財産は法人化で残しなさい』『円満な相続の本』など。

税理士法人ATO財産相談室

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