住まいについて考えたきっかけ
一人暮らしのため、介護になっても安心な住まいを探していた康博さんは、ようやく理想の「有料老人ホーム」を見つけました。さっそく所有マンションを売却して費用の捻出を考えますが、一足先に有料老人ホームに住み替えた友人の「案外月々の出費が増えて、この先お金が不安…」という言葉を思い出して、ケアデザインプラザに相談しました。
ケアデザインプラザのサポート
ケアデザインプラザでは、康博さんに住み替え先の情報を伺った後、資産と収入の整理、把握をお願いしました。その上で、資金計画の立て方や将来必要となる費用を把握する際のポイントをご説明しました。
住み替えの資金・費用は大きく分けて二つ
資金計画を立てる前に、ご自分の資産状況を正しく把握することが大切です。例えば不動産資産を活用して住み替えの費用に充てると、金融資産の目減りは少なくなり、資産整理のひとつとして利用できます。ただし、不動産を売却する場合は、手続きに時間がかかる、想定より売却額が低いこともあるため、スケジュールには余裕を持たせる、住み替え費用は売却額の7割程度をイメージするなどの注意が必要です。
◆保有資産(金融・不動産)を整理
まず、預貯金や有価証券、生命保険、自宅も含めた所有不動産を整理します。負債も資産になりますので、住宅ローンやその他借入金なども含めて保有する資産を種類ごとに分けて確認しましょう。
◆定期収入を把握
年金や給与収入(役員報酬等)、配当金や家賃収入など、毎月、毎年決まった時期に得られる収入を中心に整理すると住み替えに利用できる費用が見えてきます。
◆入居する時にかかる費用
入居一時金や前払い方式を選択すると、入居時に十数年分の家賃などをまとめて支払います。これらは、入居と同時に一部償却(初期償却)され、残りは運営事業者が定めた期間内で均等に償却されます。償却期間を過ぎた後は、追加費用なく入居を継続できるところがほとんどです。最近は多くの有料老人ホームで入居時の費用を抑えた月払い方式を設けていますが、その分月々の支払いは高額になります。
◆月々かかる費用
管理費や食費、生活支援費(居室の清掃等)などの定額費に加えて、介護費や自費サービスなど個々の状態に応じてかかる費用についてご説明。住み替え先候補の “重要事項説明書や生活支援・介護サービス提供書”をチェックして、費用をいま使うもの、将来必要、楽しみのためなどに分類することをアドバイスしました。
いまだけでなく、10年先の暮らしをイメージする
いまは元気でも心身の状態が変化すると、利用するサービスや費用も変わっていきます。10年後、介護や医療ケアを必要とする姿や希望する暮らしがイメージできると、費用も見えてくるため、支出の全体像がはっきりします。また、暮らす期間は誰にもわからないため、余裕を持った資金計画を立てることがポイントです。
介護費用を所有マンションの賃貸収入で確保した康博さん
資産の把握と老人ホームの費用を確認した康博さんは、金融資産を整理して入居一時金を用意しました。所有マンションは賃貸にして、家賃収入で月々の費用を補うことに。康博さんは「不動産は売却と考えていたが10年先の暮らしをイメージしたら、将来の介護費用として残しておこうと思いました。目の前ばかり見ていたら、立てられなかった資金計画です」とお話しされていました。
※本記事は2019年1月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。
介護支援専門員(ケアマネジャー)、社会福祉士、精神保健福祉士。地域包括支援センターの相談員として、一人暮らしや認知症の方の暮らし、介護、権利擁護などの相談に従事後、ケアデザインプラザで介護コンサルタントとして、シニアの暮らしにかかわる幅広い相談に対応している。
三井不動産株式会社 ケアデザイン室
渡邉 幸子