住み替えを考えたきっかけ
陽子さんはご主人を看送られて5年、茶道を楽しみとして一人暮らしをしていましたが、年々教室に通うのが辛くなり、家事も少し億劫になっていました。そんな時、友人から食事や掃除のサービスを受けながら生活ができる有料老人ホームの話を聞き見学したものの、8畳ほどの部屋にベッド、洗面台とトイレがあるのみ。一日中寝室で過ごすような感覚に自分が望む暮らしとは異なる印象を受け、今後の住まいについてケアデザインプラザに相談にこられました。
ケアデザインプラザのサポート
住まいを探すとき、最初におこなうことはニーズの確認です。単に要望だけでなく、自分でも意識していない不安や心配事にも目を向けていくと本当に望む暮らし方が見えてきます。
「誰と・どこで・いつから・どんな暮らしをしたいか・いま困っていること・将来の不安・心身の状態・お金のこと」など陽子さんの想いを伺うと、「介護が必要になったときに頼れる人がいない」という不安を抱えていることがわかり、家事支援のサービスがあり茶道ができることに加え、「介護が必要になっても暮らせる住まい」をニーズとして整理しました。
次に、陽子さんのニーズに合う可能性の高い高齢者施設や住まいについての正しい知識、情報を収集。今回は、広い居室と茶道ができる共有部を持ち、介護サービスも提供する「自立者向けの有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」をピックアップし、それぞれの特徴、費用の目安などをお伝えしました。
見学は複数人で行くこと、夜間や食事の様子などを知るために体験入居をおこなうこと、入居を決める前には必ず「重要事項説明書※」を確認することをお勧めしました。陽子さんは見学や体験入居を重ね、1年後に複数の候補のなかから茶道を楽しみながら、必要に応じて介護サービスも受けられる「自立者向けの介護付有料老人ホーム」を新たな暮らしの場として選択されました。
※重要事項説明書
入居一時金の詳細や月額費用の内訳、退去要件や人員体制、サービス内容等の詳細が記載されている。
新しい暮らし方を選択
シニア世代が自宅以外を暮らしの場として選ぶ“きっかけ”は介護や病気、身体機能の低下などマイナスの思いばかりではありません。趣味を楽しみたい、自由な時間が欲しい、お友達をつくりたいなど、暮らしを楽しむための住み替えも増えています。住まいは暮らしの中心です。自分が望む暮らし方を知る機会として一度、将来の住まいについて考えてみませんか。
※本記事は2017年10月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。
介護支援専門員(ケアマネジャー)、社会福祉士、精神保健福祉士。地域包括支援センターの相談員として、一人暮らしや認知症の方の暮らし、介護、権利擁護などの相談に従事後、ケアデザインプラザで介護コンサルタントとして、シニアの暮らしにかかわる幅広い相談に対応している。
三井不動産株式会社 ケアデザイン室
渡邉 幸子