スペシャリスト ビュー

横浜市立大学 国際総合科学部 教授 齊藤 広子 氏

コミュニティが鍵を握る管理のクオリティとマンションの資産価値
老朽化と高齢化という「2つの老い」で岐路に立つマンション管理のこれから

地域や行政と連携しながら資産価値を高めていくために

資産価値というものを考えるとき、もうひとつ重要な視点はマンションを取り巻く地域全体の価値です。その地域に魅力がなければ、そこに建つマンションの価値を高めることは容易ではありません。近隣との共催イベントやまちづくり、地域の開発計画との連携などを通じて、その地域全体の利便性や快適性を高められれば、おのずとマンションの資産価値向上も図れると思います。

また、マンションを取り巻く現在の困難な状況に対しては、行政も様々な施策を推進中です。私も参加する東京都住宅政策審議会でも、管理組合の自主的な取り組みを促すための支援や管理状況の実態把握、管理の適正化に向けた市場環境の整備といった「マンションの適正な管理の促進」、そして、老朽化の実態把握や再生支援策の強化などによる「老朽マンション等の再生の促進」という2つの方向から支援策を提言しています。

「終の棲家」と見なされるマンションも、いつかはその「資産価値」を試されます。ご本人は住み続けても、それを相続したお子様が売却するかもしれない。そのときに、売れない不動産を子供に渡すのか、売りやすいものを渡すのか、そう考えてみれば本来、資産価値というのは皆さんが求めているものなのです。コミュニティの、同じマンションや同じまちに生きる人々の結束力が、自分たちのマンションや地域の資産価値を守る大きな力になることを、一人でも多くの方にぜひ理解してほしいですね。

※本記事は2019年1月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

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