何が起きた?!
今回は、すでに父の相続が済んだあと、母も他界したことで巻き起こった長男、次男、長女の3人の遺産分割のもめ事を取り上げます。築30年の自宅隣接の賃貸マンションや月極駐車場などの遺産を兄弟間でどのように分けるか。3年前に父が他界してから相続について特に対策を取ってこなかったことが要因となって様々な思惑違いがあらわになりました。
争いの場は家庭裁判所へ。
長男は「今までお母さんの面倒を見るのにかかった費用もあるし、今後もお墓を引き継ぐので、俺は一番多くもらわないと!」と言えば、弟は「兄さんはお母さんの家賃収入を生活費にし、もうすでに十分もらっているはず」と主張。それに対して、妹からは「お兄ちゃん(次男)はお母さんから時々援助受けていたでしょ」「援助を受けた分を、今回の相続財産に含めるのが当然じゃないの?」と、誰に知恵をつけられたのか次男に対して辛辣な発言が飛び出す始末です。
三人の話し合いでは罵り合うばかりで話が進展せず、とうとう家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになりました。
調停成立するも、その後は。
家庭裁判所での数回の調停ののち、決着がついたのは母が亡くなってから1年後。実家は長男が相続し、賃貸マンションは3人で3分の1ずつの共有持ち分となりました。また、駐車場は売却し、売却代金を次男と長女に2分の1ずつ分配することで落ち着きました。
現在は賃貸マンションの収入を長男が一括で受け取り、3分の1ずつを弟と妹に送金しています。しかし、マンションの大規模修繕をおこなうにも共同所有者である兄妹全員の合意が必要となるため、話がなかなかまとまらないうちにどんどんスラム化し、入居者も徐々に減りつつあり、賃貸マンション経営も行き詰まりを見せているのが現状です。
また、罵り合いののちに調停までもつれこんだことで、きょうだいの仲はぎくしゃく。付き合いも疎遠になりつつあります。
調停成立するも、その後は。
長男は、争って仲たがいのようになってしまった今回の相続について、「母が亡くなる前に、築30年を迎えた賃貸マンションの運営をどうするのか、方針を決めておくべきだった。老朽化したマンションを改修するには大金が掛かるし、工事期間中は賃貸収入が途絶えてしまう。様々なことを考えると、割り切って売却してしまう方法もあったのでは」と後悔しています。
例えば、賃貸マンションを売却した現金で都心部のマンションを数戸購入します。そのマンションは賃貸物件として運用しても良いですし、弟家族や妹家族に使ってもらっても良いでしょう。そして相続が発生したら、これらのマンションを弟や妹に分けるのです。このように、分けにくい財産であれば、分けやすいカタチにするのも一手です。
『相続では、誰に何を残してあげるかを考えることが大切』であったと、長男は今回の経験から身にしみて感じたのでした。
※本記事は2018年5月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。