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どのような時に測量が必要となるのか

どのような時に測量が必要となるのか

一口に測量と言っても、さまざまな測量があります。測量の基本となるのは、基準点測量ですが、それ以外にも、地形測量、写真測量、応用測量等があります。

今回のコラムでは、私たちに最も身近な現地測量(現況測量)と用地測量(境界確定測量)について、お話したいと思います。

現地測量(現況測量)と用地測量(境界確定測量)

現地測量とは、現地において測量機器を用いて、地形、地物等を測定して、数値地形図データを作成する作業です。一般には「現況測量」と言われるもので、現地をあるがままに観測し測量図等を作成する作業のことです。ここでは、「現況測量」と言うことにします。

用地測量とは、土地及び境界等について調査し、必要とする資料や測量図を作成する作業です。一般には「境界確定測量」と言われるもので、現地において関係権利者立会いの上、境界を確認し、境界点に境界杭を設置して、境界確認書の取り交わしや、測量図等を作成する作業のことです。ここでは、「境界確定測量」と言うことにします。

それでは、この「現況測量」と「境界確定測量」がどのような場面で必要となるのかについて見ていきたいと思います。

現況測量が必要となる場面

まず「現況測量」が必要となるのは次のような場合です。

(1)建物の新築

建物を新築するような場合が最も一般的です。建物を建築しようとしている土地に、どのような建物が建てられるのかを設計するために、間口、奥行き、敷地の形状や面積等が必要となります。現況道路の中心から2メーターのセットバックラインを出すのにも必要です(現況求積測量、現況平面測量)。

(2)土地の高低差

高低差がある土地で、低い所と高い所の高さの差が知りたい場合にも現況測量が必要となります(高低測量)。

(3)真北の調査

日照制限(北側斜線制限)などを調査する場合には、真北方向を出す必要があります。これは太陽観測を行い、計算で真の北を求めるのが一般的です。ちなみに東京では、方位磁石の北は、真の北より約7°西にずれています(真北測量)。

(4)土地の評価

相続税等、土地の評価をする場合には、利用区分毎の間口、奥行き、形状、面積等が必要となります(現況求積測量、現況平面測量)。

(5)測量図の確認

土地を購入するような場合、売主から提示されている測量図が正しいのかを確認するためには、現地の測量が必要となります(点検測量)。

これらが、「現況測量」の代表的なものですが、これ以外にも、建物の高さや、窓の位置、越境物、樹木の位置や幹回りなどを図面にするのも「現況測量」です。

境界確定測量が必要となる場面

次に「境界確定測量」が必要となる場面について見ていきましょう。

(1)土地の売買

最も代表的なものは、土地を売買する場合です。以前は、公簿面積(登記簿に載っている面積)での売買で良かったようなのですが、地価高騰の影響により最近は、特に都市部の売買においては、買主側から土地の境界を確定した上での実測面積による売買を求められるケースが増えています。また、隣接地との境界を確定した証として、境界確認書の引渡しを要求されます。ちなみに、土地の境界を確定するためには、隣接地の所有者と現地で立会い、境界をお互いに確認する作業が必要となります。そのため隣接土地所有者の協力が無いと、境界が決められないという事態になり、売買ができないということになる場合もあります。

(2)土地の物納

土地を物納しようとする場合にも「境界確定測量」が必要となります。平成18年度の税制改正により、平成18年4月1日以後の相続について、物納するための整備要件や、手続き、書式などが細部にわたって定められました。土地については申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに境界確認書、測量図、登記事項証明書などの必要書類を提出しなければならなくなりました。要するに、「現地」と「測量図」と「登記簿」を一致させることが、土地を物納するための要件なのです。「境界確定測量」をするためには、かなり長い時間を必要とするため、実際は被相続人の方が生きているうちに測量に着手しないと、申告期限までに間に合わないということが起こってしまいます。

(3)土地の分筆

土地を分筆登記する場合にも「境界確定測量」が必要となります。平成17年3月7日から新不動産登記法及びその関連法令等が施行されたことにより、土地の分筆登記申請をする際に、法務局に提出する地積測量図の取り扱いが明確化されました。これにより、分筆登記をしようとする土地については、全ての境界について、隣接土地所有者との境界確認作業が必要となったのです。

(4)寄付や払い下げ

土地の寄付(帰属)や、国(公)有地の払い下げをする場合。この場合には寄付や払い下げをする土地を特定する必要があることから、「境界確定測量」が必要となります。手続きについては、所管の役所によって違うため、土地家屋調査士または、最寄りの市区町村役場にお問い合わせ下さい。

(5)境界杭の復元

身近な例では、道路工事等でお隣との境界杭が無くなってしまった場合にも「境界確定測量」が必要となります。無くなった境界杭に関係する土地所有者全員の立会い、確認の上で、新しい境界杭を設置しないと、境界紛争の基となってしまいます。

以上が「境界確定測量」の代表例ですが、この他にも土地の境界や面積を確定する必要がある場合には、「境界確定測量」を実施しなければなりません。

現況測量と境界確定測量の違い

「現況測量」と「境界確定測量」の違いは、「現況測量」は現地にある「物」を測って測量図等を作成するのに対して、「境界確定測量」は目に見えない「境界」を測って測量図等にしなければならない点が大きな違いです。

「境界確定測量」を実施するためには、隣接土地所有者の協力が必要不可欠となります。隣接土地所有者の中には、境界の立会いに協力して頂けない方や、その土地について相続争いをしている方、所有権について係争中の方、行方不明者、認知症、知的障害者、精神障害者の方などがいる場合があります。

また、境界紛争とまではならないにしても、境界について意見の違う方などがいて、境界が合意されるまでに数年を要する案件もあります。そのため「境界確定測量」は「現況測量」とは比べものにならないくらい「時間」と「費用」が掛かります。

将来に備えて境界を確定する

将来の相続を考える場合には、土地の所有者さんが元気なうちに土地家屋調査士に依頼して「境界確定測量」を実施されることをお勧めいたします。なお不動産収入のある地主さんについては、測量に掛かった費用を経費とすることができる場合があります。また、相続が開始した後で、土地を物納するために掛かった測量費用などは、物納申請者の負担となりますのでご注意下さい。

次回は「境界」についてお話したいと思います。

昭和38年生まれ。平成7年土地家屋調査士登録。測量を通してお客様に「安心」を提供することを目的に平成9年株式会社測量舎を設立。誠実・確実・迅速を合言葉に年間100現場以上の境界確定測量。平成18年土地家屋調査士法人測量舎を設立。ADR認定土地家屋調査士、測量士。

高橋一雄土地家屋調査士事務所

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