あなたの「土地」は本当に大丈夫?
土地についての調査を実施してみると、お隣との境界を確認した事実を証明する境界確認書(測量図付き)が無かったり、現地に境界標が設置されていなかったり、測量図と現地の寸法が違っていたり、登記簿の面積と実際が違っていたり、本当に様々なケースがあります。
境界に関して、決まっていると思っているのは本人だけで、隣接所有者と境界の認識が違っている場合があります。
図面もお隣との境界確認をしない現況を測っただけの現況測量図の場合などがあります。土地の登記簿に境界がどこかといった記載がないので、土地の登記がされているからといって安心はできません。
このように自分では大丈夫と思っている土地が、実際には非常に不安定な状態にあり、将来境界紛争になる可能性を秘めた土地である場合があります。
境界は目に見えません。そのために勝手なことを言っても、それが本当なのか不当なことなのかが分かりません。
土地に対する権利意識が昔と比べて非常に強くなってきています。人の弱みに付け込んで自分の土地を増やそうと考える人がいます。自分に有利な図面を持ち出して来て、境界を主張する人がいます。自分の思い込みをあたかも正しいことのように主張する人がいます。他人の土地を勝手に占有して、時効取得を主張する人がいます。
あなたが大丈夫と思っている土地は狙われているのです。自分の土地は自分で守らなければいけません。また、万一あなたが亡くなってしまったら、誰があなたの土地を守ってくれるのでしょうか? 土地の所有者であるあなた以上に自分の土地のことをよく知っている人はいないのです。子孫に安全・安心な土地を残すのは、親の務めです。
自分の土地を守ること……その方法
まず土地の所有者自身が元気で長生きすることです。元気で長生きしている間は、相続争いもありませんし、隣接所有者と境界の認識が違ったとしても解決する時間があります。
次に、土地家屋調査士に依頼して、土地境界確定測量を実施してもらうことです。「土地境界確定測量」とは、隣接所有者と現地において境界の確認を実施して、お互いに合意した境界点を基に境界標の設置や、測量図の作成、土地境界確認書の取り交わしをする測量のことです。境界紛争の元となる『思い込み』と『あいまいさ』を無くすために絶対に必要な作業です。
三番目は地積更正登記の申請です。「地積更正登記」とは登記簿の面積と実際の面積を一致させる登記のことです。地積更正登記に添付する地積測量図は、登記所で永久保存してくれます。地積更正登記も土地家屋調査士の業務範囲です。
四番目は境界標を管理することです。境界標の管理は土地の所有者だけでなく、家族全員で行って下さい。万が一、土地の所有者が亡くなってしまったら「誰も境界標のことを知らない」という事態を避けなければなりません。
境界標については、工事等で正しい位置から移動してしまうことがあります。移動の事実を発見した場合には、直ちに測量を実施した土地家屋調査士に連絡して、正しい位置に直してもらって下さい。境界標が間違った位置に入っていると境界紛争の原因となります。
以上のことを実施することによって、『現地』と『測量図』と『登記簿』が一致している『安全・安心な土地』となります。ここまで出来てはじめて「うちの土地は大丈夫」と言えるのです。
昭和38年生まれ。平成7年土地家屋調査士登録。測量を通してお客様に「安心」を提供することを目的に平成9年株式会社測量舎を設立。誠実・確実・迅速を合言葉に年間100現場以上の境界確定測量。平成18年土地家屋調査士法人測量舎を設立。ADR認定土地家屋調査士、測量士。
高橋一雄土地家屋調査士事務所
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