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度・量・衡について

度・量・衡について

今回は、前回までの筆界特定制度とは趣をかえて、度・量・衡(ど・りょう・こう)について少しお話したいと思います。

年配の方や、農家の方、大工さんなどとお話をしていると、畝(せ)、反(たん)、町(ちょう)、坪(つぼ)、歩(ぶ)、間(けん)、尺(しゃく)、寸(すん)と言った言葉を耳にすることがあると思いますが、現在の学校では全く教えていないので、これらがいったい何なのか、全く分からないという方がいます。

そこで、今回はこれらについて紐解いてみたいと思います。

1.度・量・衡の歴史について

大昔、私たちの祖先が集団生活を営むようになり、他の集団との交わりが生じてくると、次第に物々交換をするようになってきました。その時に必要とされたのが集団間での統一した単位です。遊牧(狩猟)民族は、「重さ」を重視し、農耕民族は「長さ」、「広さ」を重視していたようです。そこで出てきたのが度・量・衡です。

度とは、物差しつまり「長さ」の単位のことです。量とは、升つまり「体積」の単位のことです。衡とは、はかりつまり「重さ」の単位のことです。つまり度・量・衡とは物を測るための単位のことなのです。我々日本人は農耕民族ですので、特に「長さ」について見ていきたいと思います。長さが分かれば、「広さ」(縦の長さ×横の長さ)が分かります。

古代における長さの単位は、人体によって表されてきました。これを身体尺と言います。例えば日本では、「尋(ひろ)」大人が両手を広げた長さ(約1.60~1.80m)、「寸(すん)」人差し指と中指を合わせた幅(約3.03cm)、その他に「握(つか)」手を握った時の親指を除いた4本分の幅や、「咫(あた)」指1本分の幅などがあります。三種の神器である「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」、「八咫鏡(やたのかがみ)」の中にも、「尺」と「咫」の字が使われています。

イギリスでは、「ヤード」腰回りの長さ、「フィート」足の裏の長さ、「インチ」親指の幅などがあり、現在でもいろいろな場面で使用されています。

「身体尺」を見ると、「日本人は手でものを測り、イギリス人は足で測る」と言われているのも納得します。

日本における度・量・衡の統一は、太閤検地まで待たなければいけませんが、度・量・衡を定める(改定する)行為は、権力の象徴であり、時の権力者によって様々な改定が行われてきました。そのため、時代によってさまざまな度・量・衡が使われてきた訳です。

2.尺貫法(しゃっかんほう)について

尺貫法は、日本独自の単位で、長さの単位に「尺」、質量の単位に「貫」を基本の単位としました。「尺」は始め、手のひらを広げた親指から中指までの長さ(約18Cm)のことでした。これは「尺」の字形からも分かります。

しかし時代や地域によってその長さが異なっています。同じ時代であっても使用する目的によって、複数の「尺」が使い分けられてきたようです。明確に6尺が1間となったのは、明治24年施行の度量衡法からです。

ちなみに現在は、取引や証明で尺貫法を用いることは法律で禁止されています。そのため、日本家屋の設計では尺を基準としていますが、設計図の寸法はあくまでメートル法を基準とし、尺をメートルに換算して表記されています。また不動産価格の表記が、坪単価を「3.3平方メートル当たり○○万円」としているのもそのためです。

尺貫法での単位は、以下のとおりです。

長さ

1尺(10/33メートル)、1寸(1/10尺)、1間(6尺)、1町(360尺)
1里(36町)、1文(1文銭の直径 約24mm)
(ジャイアント馬場選手の足の大きさ16文は38.4cmとなります)

広さ

1坪・歩(6尺平方)、1畝(30歩)、1反(300歩)、1町(3,000歩)
(田畑や山林の地積には、町、反、畝、歩を使用し、宅地や家屋には坪を使用します)

体積

1升(2401/1331リットル≒1.8039リットル)、1合(1/10升)、1斗(10升)、1石(100升)

重さ

1匁(3.75g)、1両(10匁)、1斤(16両)、1貫(100両)
(100貫デブは、375kgとなります)

3.石(こく)について

改新の詔に「凡そ田は長さ30歩、広さ12歩を段と為し、10段を町とせよ…」とあります。つまり始めは、1段=30歩×12歩=360歩だった訳です(段=反、歩=坪)。

「反(たん)」とはお米を生産する田の面積の単位ですが、太閤検地以前は概ね6尺四方を1歩として、360歩で1反とされていました。これが太閤検地によって、6尺3寸四方を1歩として、300歩で1反と定められました。江戸時代になると、1反300歩は変わりませんが、6尺1寸四方をもって1歩になり、明治になって、現在の6尺四方で1歩となりました。

「石(こく)」とはお米の量の単位ですが、一人の人が1年間に消費するお米の量を基準に設定されました。加賀100万石などの「石」のことです。つまり100万石とは100万人の人が1年間に消費するお米が採れる土地ということになります(実際には石高とお米の生産量には違いがあります)。

「反」と「石」の関係は、もともと1石のお米が採れる田の面積が1反だったのです。1反360歩ということは、昔の1年は360日でしたから、1歩の面積の土地から、1人の人が1日に消費するお米が採れる計算になります。

太閤検地の時代には、農業技術が進歩してお米の採れる量が増加してきたため、360歩(坪)1反ではなく、300歩(坪)1反となったわけです。しかし、実際には田の良し悪しにより1反の収穫高に差があったため、田を上田、中田、下田に分け、それを更に3段階に分けて9段階として、検地を行いました。これを「石盛」といいます。

ちなみに、江戸時代のお米の価格は、1石で1両前後だったようです。1石のお米の量は2俵半。1俵の重さが60kgですので、2俵半は150kg。現在のお米の価格が10kgで3,000円から4,000円だとすると、当時の1両は約5万円前後であったと考えられます。

4.メートル法について

メートルという度・量・衡の基準を提唱したのは、18世紀末のフランスです。フランス革命後の1791年、地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1,000万分の1を1メートルと定められました。この時、質量の単位、面積の単位、体積の単位も同時に定められました。

日本は、1885年(明治18年)にメートル条約に加入し、1891年(明治24年)施行の度量衡法(尺貫法)と併用することとなります。1921年(大正10年)尺貫法廃止、1951年(昭和26年)度量衡法が廃止され、メートル法の本格的な使用が義務付けられました。

ちなみに現在の1メートルは、1秒の約3億分の1の時間に光が真空中を伝わる距離と定義されています。

最後に、坪と平方メートル、間とメートルの換算の仕方を載せておきますので参考にして下さい。

坪と平方メートルの関係

0.3025坪=1m2
坪÷0.3025=m2
m2×0.3025=坪

間とメートルの関係

0.55間=1m
間÷0.55=m
m×0.55=間

昭和38年生まれ。平成7年土地家屋調査士登録。測量を通してお客様に「安心」を提供することを目的に平成9年株式会社測量舎を設立。誠実・確実・迅速を合言葉に年間100現場以上の境界確定測量。平成18年土地家屋調査士法人測量舎を設立。ADR認定土地家屋調査士、測量士。

高橋一雄土地家屋調査士事務所

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