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関東大震災から100年……、今改めて考える!資産を次世代につなぐ、地震リスク緊急対策【第2回】

前回は、耐震強度に不安を抱える不動産を所有するリスクについて見てきました。もしご自身が所有する物件が旧耐震基準の建物で、耐震診断でも耐震強度不足という結果が出た場合は早急な対策が必要となります。しかし、検討するにも何から手をつけてよいかわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は対策検討の手順について押さえていきましょう。

対策❷ 建て替え

耐震補強工事(大規模改修工事)は、投資回収が見込めない、補強のために必要な工事が大規模になるなどの理由から、断念せざるを得ないことも少なくありません。そうした場合に考えられるのが既存の建物を取り壊し、新耐震基準の建物を建てる「建て替え」です。

建て替えは建物を一からつくるため、耐震補強工事等に比べて工事費が高額になります。投資効率は注視すべき指標の1つですが、近年は工事費が高騰していることもあり、頭を悩ませているオーナー様も多いことでしょう。また、借り入れを伴う場合、長期の借り入れが可能とはいえ、多額となるぶん、返済計画を慎重に検討することが大切です。

工事期間も長期におよびます。解体着手から新築建物の竣工までに少なくとも2年程度はかかるでしょう。規模によってはそれ以上かかります。工事期間中は家賃が入らないため、家賃収入で生計を立てている方は、建て替え費用に加えてその間の生活用資金も確保する必要があります。また、入居者の立ち退きについても、耐震補強工事と同様、しっかりと取り組まなくてはいけない課題の1つです。

このように建て替えには課題がいくつもありますが、建物をつくり替えるという抜本的な対策なので、耐震性はもちろんのこと、収益性や競争力の向上の期待が高い対策といえます。また、相続対策としても、分割や節税(相続税評価の減額など)の効果が期待できます。建て替えは、さまざまな課題を1つ1つクリアしていくことで、安心・安定の資産づくりと次世代への承継が実現できる対策といえるでしょう。

「ゼロから考える」が建て替え検討の秘訣

建て替えの検討において大切なことは、既存の建物の用途や規模・間取りなどに縛られず、ご自身の現状に最適な計画をゼロから考えることです。

その一例として、東京都文京区に鉄筋コンクリート造・7階建てのオフィスビルをご所有されていたA様のケースをご紹介します。このオフィスビルは築40年の旧耐震基準だったため、A様はその耐震性に長年不安を感じていました。そこで耐震診断を実施したところ耐震強度不足の結果が出たため、対策の検討を進めることにしたのです。当初A様は耐震補強工事による対策をお考えでした。しかし、近年空室が目立つようになっており、今後のオフィスビル経営に漠然とした不安をお持ちだったことからレッツにご相談をいただきました。

レッツがマーケット調査を行ったところ、当該エリアのオフィス需要は下降傾向である一方、駅周辺の商店街や街並みが整備されたことから住宅需要が高まっていることがわかりました。そこで、レッツは賃貸マンションの建築プランをご提案。

A様は用途変更は想定していなかったとのことですが、将来的な安定性も重視し採用いただきました。また、従前のビルはA様が自主管理されていましたが、新しいマンションの管理は将来を見据えてサブリースを採用。次世代の方たちが容易に管理できる体制を整えることができたのです。

A様のケースは既存の建物の用途などに縛られず、現状に適した計画をゼロから考えた成功例といえます。この事例のように新しい建物を計画(用途や規模、間取りなど)する際は、無条件で従来と同じ内容を採用するのではなく、まずは市場調査などにより現在のエリアニーズを把握することから始めましょう。

このように言うと大がかりなことにように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、見方を変えれば周辺環境やご自身のライフスタイルに合わせて計画内容を自由に選択できるということであり、それも建て替えの大きな魅力の1つといえるでしょう。

なお、建て替えをした場合、その建物を今後数十年にわたって使うことになります。つまり、次世代の方も長く所有される可能性があるということです。ぜひ次世代の方ともお話ししながらプランを考えるようにしてください。

不動産経営に対してさまざまな想いや期待を抱いている次世代の方もいらっしゃいますし、一方で仕事を持っていて時間的な余裕がない、海外や遠方に住んでいて対応が難しいなどの理由から「建物管理はできない(したくない)」と考える次世代の方も少なくありません。次世代の方とも話し合い、みんなが納得できるプランを考えていきましょう。

対策❸ 売却(資産の組み換え)

最後にご紹介するのは「売却」です。愛着ある土地を手放すことになりますが、投資を伴わないため、耐震補強工事や建て替えにかかる費用の捻出が難しい、投資回収の見込みが立たないといった場合の選択肢として考えられます。

売却資金で新耐震基準の別の物件を購入すること(資産の組み換え)もできます。入居者への立ち退き交渉が難航し対策が講じられない場合は、入居者が住んでいる状態で建物を売却することも可能です。

また、前述のように、次世代の方が将来的な建物管理を負担に感じているケースをよく見聞きします。そのような場合は、売却し現預金にして承継する、あるいは売却資金で管理手間のかからない区分マンション等を購入して承継するなども考えてみてはいかがでしょう。

いかがでしたでしょうか。所有不動産の耐震性に少しでも不安がある方は、ぜひこの機会に対策を考えてみてください。そして、地震から大切な資産を守り、次世代にしっかりとつないでいっていただきたいと思います。

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本サイトではこれからもオーナー様の資産経営に役立つさまざまな情報を発信してまいります。
なお、本コラムは三井不動産グループの資産経営情報誌「Let’s Plaza 2023.Autumn号」に掲載した記事を修正、改題したものです。「Let’s Plaza」(年3回発行)では資産経営に関する旬な話題や詳細な事例などを豊富に掲載しておりますので、ぜひ最新号よりご購読ください。

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