資産経営に差がつく、骨太“法務”塾

サブリース契約を考える際の留意点とは?

記事作成日:2022年2月8日
記事公開日:2023年4月17日
記事改訂日:2023年4月17日

〈今回のテーマ〉アパート・マンション運営の形態

土地の有効活用として、サブリース契約によるアパート経営を考えています。入居者が家賃を滞納したときや、入居者が退去して空室が発生したときもサブリース事業者が家賃を支払ってくれると聞いています。特に「10年間家賃保証」との広告も見ますので、ぜひ利用してみたいと思いますが、どのような点に注意しておけばよいのでしょうか。

サブリース契約の仕組みとメリット

サブリース契約とは、賃貸アパート等の建物の所有者(オーナー)が入居者に直接建物を賃貸するのではなく、まずはサブリース事業者との間で建物賃貸借契約を締結(法的にはこれをマスターリースという)し、その建物の貸室を事業者が実際に入居する者に転貸するという仕組みです。オーナーは、実際に賃貸建物に入居する者との間では何らの契約をしておらず、もっぱら中間者である事業者に賃貸建物を賃貸することになります。

サブリース契約の賃貸期間を10年とした場合には、事業者が契約期間中は約定の賃料を支払うので、「10年間家賃保証」などと謳われることがあります。サブリース契約ではオーナーが賃料の安定性を重視する場合、転借人となる入居者の家賃の滞納や、空室の発生などにかかわらず、事業者からオーナーに対して賃料が支払われるような契約にすることも可能です。また、入居者が退去した場合の原状回復等の借家人との協議はすべて事業者が行います。このように、オーナーが賃貸借の管理の煩わしさから解放され、一定の賃料収入が得られるという点がメリットといえます。

利用前には留意点もしっかり把握する

一方、留意点としては以下のことがあげられます。

①事業者の実績や「賃料保証」の内容をチェックする
オーナーの方によくある勘違いが、「サブリース=空室保証・賃料保証」というものです。しかし、空室保証を付けないプランもあります。また、サブリース広告で「10年間賃料保証!」などと表示したものでも、必ずしも当初の賃料が10年間保証されるわけではありません。サブリース契約は法的には建物賃貸借契約で、事業者は契約期間中であっても借地借家法に基づく賃料減額請求をすることが認められていますので、途中で当初の契約よりも値下げされることがあり得ます。

また、事業者が倒産するリスクも考える必要があるでしょう。しかし、逆に当初の査定金額よりも高く貸せた場合は賃料改定時に送金額を上げるという契約をしている事業者もあります。そのため、契約を考える際は各事業者の実績や評判をよく調べ、また自分がどのような契約をするのか必ずチェックすることが必要です。

②オーナーからの解約が原則として認められていない
オーナーの中には、契約を解除して自主管理をしたいと考える方もおられます。しかし、サブリース契約の法的性質は建物賃貸借契約ですので、オーナーから契約を解約するには、借地借家法に定められた「正当事由」が必要とされ、通常はオーナーからの解約が困難となっています。

このようなデメリットは、法律の改正により、事業者側からオーナーに必ず契約前に説明するという決まりになっています。しかし、それでも説明されていないといったケースも耳にしますので、理想の賃貸経営を行うためにも契約する前にこのような点に注意し、デメリットを理解しておきましょう。

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【レッツより】三井不動産グループの賃貸管理では、オーナー様のご要望に応じてさまざまなタイプの契約をご用意しております。詳しくお知りになりたい方はレッツまでぜひお問い合わせください。

東京大学法学部卒業。弁護士(東京弁護士会所属)。最高裁判所司法研修所弁護教官室所付、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員、民事訴訟法改正問題特別委員会副委員長、NHK文化センター専任講師、不動産流通促進協議会講師、東京商工会議所講師等を歴任。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事。

海谷・江口・池田法律事務所

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