「瑕疵」とは
そもそも「瑕疵」とは欠点・欠陥のあることを意味します。瑕疵には様々なものがあり「法律行為における意思表示の瑕疵」「売買の目的物の瑕疵」「土地工作物の設置・保存の瑕疵」「占有における瑕疵」などが問題とされます。
例えば、法律行為の意思表示において、詐欺・脅迫によってなされたものは「瑕疵ある意思表示」として取り消すことができるとされています(民法96条)。 また、売買の目的物にかくれた瑕疵があった場合、買主は売主に対して損害賠償の請求ができるとされており、そのために売買の目的を達成できないときには契約を解除することができるとされています(民法570条)。 不動産を取引する場合の売買契約においても、民法のこの条文が適用されます。民法どおりの解釈では、『善意・無過失である買主が「隠れた瑕疵」を発見した場合、買主が瑕疵を知ってから1年以内であれば、売主に対して「瑕疵担保責任」を追及できる』ということになります。「買主が瑕疵を知ってから1年以内」という期間の定めは、そもそも期限が無いようなもので、売主にとっては非常に大きな負担となりますし、そもそもいつ発生した瑕疵なのかという議論にもなります。従って現実の不動産売買契約においては特約という形で、売主が「瑕疵担保責任」を負う期間等を定めることが一般的になっています。
FRK標準売買契約書
FRK(一般社団法人不動産流通経営機構)が推奨する、FRK標準売買契約書(一般仲介用)では、売主が一般消費者で、一般的な中古住宅等の取引を前提として、瑕疵担保責任の範囲を、土地の隠れた瑕疵と建物の4つの基本性能に関する隠れた瑕疵〈雨漏り〉〈シロアリの害〉〈構造上主要な部位の木部の腐食〉〈給配水管の故障〉に限定するとともに、売主が責任を負う期間を、買主に物件を引き渡してから3か月以内としています。また、買主は瑕疵を発見した場合、急を要する場合を除いて、速やかに売主に連絡して立ち会う機会をもうける必要性を定めています。
なお、売主が一般消費者の場合、この期間を短くする取り決めをしたり、瑕疵担保責任自体を一切負わないとする特約を設けることも有効です。ところが、売主が宅地建物取引業者であって一般消費者が買主となるような場合には、瑕疵の対象を限定したり、売主が瑕疵担保責任を負う期間を2年未満に定めるような特約は、宅地建物取引業法に触れることとなり、このような特約は無効とされます。従って、FRK標準売買契約書(売主宅建業者用)では「売主は買主に対し、引渡しから2年間、瑕疵担保責任を負う」ことになっています。
新築住宅の場合
売買物件が新築物件の場合は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の定めにより、住宅の構造上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分について、引渡しから10年間瑕疵担保責任を負います。
消費者契約法
売主が事業者、買主が一般消費者の場合、「消費者契約法」の規定に合うような契約内容にする必要がありますので、売主が負う瑕疵の範囲を限定しません。また、売主が瑕疵担保責任を負う期間については、引渡しを完了した日から一年間としています。
法律で使う言葉は難しい言葉が多いのですが、不動産取引において、瑕疵担保責任についての意識が薄かったり、軽く考えていると、後で大きな負担を負うことになりかねません。 なお、平成30年4月1日施行の改正宅地建物取引業法において、「建物状況調査の活用を促進」し「既存住宅売買瑕疵保険への加入を促進」することが新たに盛り込まれたことで、不動産取引の動向がどのような影響を受けるか今後注目したいところです。
※本記事は2018年5月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。
関西支店 ソリューション営業部長
三井不動産リアルティ株式会社
神宮 保彦