三井のレッツコンサルタントだより

使われなくなった実家の土地を、地域貢献施設に

住む人のない実家の土地を、地域社会に貢献できる施設へ建替えたいというご相談事例を元に、医療・介護・保育分野における地域貢献施設のメニューをご紹介します。

G様(男性:65歳)からのご相談

同居していた両親もすでに他界し、娘も先日嫁いだことから、夫婦2人には広すぎる自宅からマンションへ住み替えました。ただ、思い入れのある土地を手放すのも心苦しく、経済的に特に不安もないことから、地域社会に貢献できる施設への建替えを検討したいのですが、どのようなメニューが考えられるでしょうか?

コンサルタントからの回答

医療・介護・保育事業の施設が考えられます。

住み替えや相続発生等により使われなくなった不動産の活用メニューとしては、アパートやマンションなど「住宅として賃貸」するか、時間貸駐車場や店舗など「住宅以外で賃貸」するかの方法があります。最近では空き家・空室率の増加などを懸念して「住宅以外での賃貸」をご希望される方が増えていますが、コンビニエンスストアに代表される店舗は通常の住宅地での出店が難しく、時間貸駐車場も駅距離など立地により向き不向きがあります。
そこで、こうした立地でも可能な住宅以外の賃貸メニューとして、医療・介護・保育などの分野で地域貢献する施設が注目されています。特に、都市部においては後期高齢者の急増や待機児童問題への関心の高まりを受けて、こうした施設の整備が急務となっており、そのための補助金も拡大傾向にあります。

地域貢献施設のメニューは大きく3つに分類されます。まず医療分野では、開業希望の医師や医療法人に建物を賃貸する「ドクターズレントハウス」という事業手法があります。借り手である医師は建物への投資を抑えつつ開業でき、貸し手も診療報酬という安定収入を持ったテナントを長期的に確保できるというメリットがあります。ただし、開業に十分な患者数が確保できるのか、周辺の診療所と科目が競合しないか、そもそも借り手となる医師が見つかるのかなどの課題を事前にクリアする必要があります。

次に介護分野では、「介護付有料老人ホーム」などを運営する事業者に建物を賃貸する事業手法があります。こうした高齢者向けの施設・住宅には「グループホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」など様々な種類がありますが、介護保険法上の「特定施設入居者生活介護」等の指定(自治体で公募)を受けて介護サービスを提供する施設では介護報酬等の面で有利な経営が可能なため、高い賃料を負担することが可能になります。ただし、運営効率を最適化する定員数を確保するための敷地・建物規模が必要になるほか、公募の有無に関する自治体との事前調整等が必要になります。

最後に保育分野では、「認可保育所」などの運営事業者に建物を賃貸する事業手法があります。対象児童の年齢や定員数等によりほかにも様々な施設形態がありますが、公募により補助金を受けることや、一定の敷地規模等が必要になることなどは介護付有料老人ホームとほぼ一緒です。

このように地域貢献施設には様々な種類がありますが、医療・介護・保育事業の公益的な性質から住宅等に比べて撤退(=空室)となるリスクが少なく、長期間・一括貸しすることで管理負担の軽減も期待できます。

一方で、立地・時期により変化する自治体の公募状況確認や借り手探しなど、事業実現には「住宅としての賃貸」等に比べて専門的な知識・経験が必要になりますので、ご検討の際には、ぜひレッツにご相談ください。

※本記事は2016年10月号に掲載されたもので、2021年12月時点の法令等に則って改訂しています。

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