F様(女性:35歳)からのご相談
父親から相続した築15年・総戸数40戸の賃貸マンションを
母親(70歳)との共有資産として所有しています。
賃貸経営は父親が1人でおこなっていたので、私も母親も何もわからない状態です。
空室も増えてきて、借入金の返済も心配です。
今後何をどうすればよいか悩んでいます。
コンサルタントからの回答
今後増えていく賃貸住宅用の空き家
総務省が発表した平成25年住宅・土地統計調査によりますと、日本全国の空き家数は820万戸、空き家率は13・5%となり、空き家数、空き家率共に過去最高となっています。この統計における空き家には、賃貸用の住宅のほか、別荘やセカンドハウスなどの二次的住宅・売却や取り壊しのために空き家となっている住宅なども含まれていますので、賃貸用の住宅に限定した空き家率では23%となり、今後さらに増加していくことが予想されます。
このような状況の中で、安定した賃貸経営をおこなっていくには、自らが経営者としての自覚を持って取り組んでいくことが必要となります。
そこで今回は、F様の相談事例をもとに賃貸経営をおこなっていくうえでの留意点・改善点などを整理してみました。
賃貸事業を経営するうえでの留意点
賃貸住宅を計画した当初には、例えば「20年で投資を回収する」「節税目的や相続対策で建設する」または、「子や孫の世代に受け継ぐ頑丈な建物を建てる」など様々な目的で計画されたと思います。しかし、どのような目的で建てられたとしても共通して言えるのは、「収益性」を重視すべきであるということです。賃貸事業におけるキャッシュフローが赤字では、多大な投資をして事業をおこなった意味がなくなるからです。計画当初は、ハウスメーカーや不動産会社などから長期事業収支計算(20年間~30年間程度)を含めた事業計画についての提案を受け、建設を決断されたと思いますが、事業収支は計画時点での想定であり、賃貸マーケットや建物の維持管理状態により変化するものです。従って、常に収支計画を見直しながら、収益性についてチェックすることが大切です。
また、入居者の募集や管理、建物の維持・保守などは、専門的なことも多く、個人ですべてを実施することは難しいものです。従って賃貸経営というビジネスを進めるうえで、信頼できるパートナーを選ぶことも重要なことです。
相談事例における経営改善のメニュー
F様の賃貸マンションは、郊外にある駅徒歩5分、RC造6階建、総戸数30戸、築15年の建物です。また、ご自宅から離れていることもあり、入居者管理および建物管理は、計画の提案を受けた不動産会社に一任されていました。F様からご相談いただいたときにはすでに空室が増え、このままでは手元に残る収益がマイナスになってしまうような状況でした。
レッツでは、立地も良く、賃貸マーケットとしてのニーズはあることから、建物の管理状況や収支内容の見直しを図ることで「収益性」を改善し、安定した賃貸経営を実現することが可能であると判断しました。
具体的には、建物の築年数は浅く、特段の老朽化も見られませんでしたが、「外部廊下などの共用部分の清掃が徹底されていない」「植栽の手入れがなされていない」「部屋の間取りが今の時代にマッチしていない」など改善の余地が見受けられました。また、収支内容についても、「事業資金融資における金利が高い」「利用されていない機械式駐車場の保守費用など無駄な設備の維持管理に伴う支出が多い」などの支出を削減することで、利益がかなり改善されることもわかりました。
F様に話を伺うと、委託している不動産会社からは、何の改善提案もなく、入居者募集についても力を入れているようには見受けられないとのことで不信感を持っておられたので、まずは信頼できるパートナーを見つけることが先決であることをご説明しました。
結果として、レッツから紹介した管理会社とともに、先に述べた問題点を整理し、対策を検討・実行することで、収益性も改善することができました。一時的には改善工事などで費用が発生しましたが、将来的にも安定した賃貸経営ができるようになり、ご満足いただけました。
家賃の収受や転居時の募集しかおこなわなくなっている管理会社に対して、「地元にある会社」とか「昔からの付き合いのある会社」などの理由で変えたくない思いもあるかもしれませんが、賃貸経営のパートナー次第では収益性も建物の価値も変わる時代だからこそ、適切で合理的な判断が必要です。賃貸経営にご不安やお悩みがあるのなら、ぜひレッツまでご相談ください。
※本記事は2016年1月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。