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「等価交換」。メリット多いがパートナー選びが最重要

広い土地を所有していながら、有効に活用できていない。あるいは、そもそも活用すべきなのか、売却したほうがいいのかを悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回はそういった方のために、活用法の概要と等価交換方式について解説します。

土地の有効活用

土地の有効活用の手段としては、主に①売却する、②土地を貸す、③土地に建物を建築して賃貸する、という3つの手法に大別されます。

まず、①の「売却する」という手法です。これはご所有資産の立地を変えたり、一つの土地を複数の区分マンションに組み換えるなど、根本的な問題を解決させる場合に有効な手段です。また、不動産以外への投資も可能になります。ただし、売却時ならびにその後の不動産を購入した場合には、譲渡所得税や不動産取得税などの税負担が発生する場合があります。

次に、②の「土地を貸す」という手法です。これは借地権を設定し、土地を第三者に賃貸します。借地権の設定方法はいくつかありますが、土地の返却時期が明確な定期借地権として設定されることが一般的です。定期借地権は、平成4年8月施行の借地借家法により新たに認められた比較的新しい権利で、契約更新がなく、契約期間満了後には土地が返還されます。地代収入のみに限られるため収益性は低いですが、安定的な収益が見込めます。

最後に、③の「土地に建物を建築して賃貸する」という手法ですが、これは土地所有者が全額出資して建物を建築し、賃貸事業をおこないます。オーナー様が事業者として、全ての投資額を負担しますので、空室リスクや賃料変動リスク、金利変動リスクといった賃貸経営を営むうえでの全てのリスクを負うこととなりますが、収益面では最も収入が大きくなります。

こういった手法の中で①と③の手法の良いところ取りをした手法が「等価交換方式」です。これは所有している土地を一旦ディベロッパーに売却後、新たに建築される分譲マンションの住戸のうち、「従前の土地評価額」と等しい住戸を買い戻す事業(全てを住戸として買い戻さずに、一部を差額として現金で受取ることもできます)で、残りの住戸はディベロッパーが一般のエンドユーザーに売却します。等価交換後の土地所有権は他の居住者と共有になりますが、建物建築の投資負担が無く新築の収益不動産を取得できるという点で、資金面を不安視されているオーナー様に選ばれている手法です。

等価交換方式のメリットと注意点

等価交換方式の主なメリットの一つ目は、新たな資金投資をすることなく、住宅や店舗、事務所などの建替えが可能な点です。また、建築時のコスト管理やスケジュール管理、さらには商品企画など、個人では通常建築会社任せになってしまう部分も、ディベロッパーが事業主となるため、そのノウハウ等を享受することが可能となります。

二つ目のメリットは、不動産の流動性の向上が挙げられます。従前は一つの土地として自宅利用や収益不動産として活用してきた土地から、複数の区分所有住戸を取得することとなるため、必要に応じて一戸単位で処分・換金が可能となります。また、相続時に相続人間で分割しやすくなるため、相続対策としても効果的です。

三つ目のメリットは税務上の特例が受けられる点です。原則としては、土地を売却し新たに区分所有住戸を取得しているので、売却した際に譲渡益が発生する場合には、譲渡所得税が発生します。ただし、等価交換方式は一定の条件を満たすことでいわゆる立体買換えの特例が適用できますので、売却時の譲渡所得税を繰り延べることが可能となります。また、相続税上も土地のすべてを所有しているよりも、区分所有としている方が相続税評価額が小さくなるため、相続対策上、前述の分割対策のみならず節税対策としても有効な手段となります。

一方で、注意点もあります。立体買換えの特例を適用して取得した住戸の簿価は、従前の不動産の簿価を引き継ぐことになりますので、当該住戸を収益用不動産として活用する場合には、減価償却として費用計上できる金額が少なくなります。

 等価交換は、単に土地を売却するよりも複雑で、竣工した後もディベロッパーと共同で事業を行う関係が続くため、もっとも重要なのは、まずは信頼できるディベロッパーをパートナーとして選定することだと言えるでしょう。
先祖代々受継いだ土地、創業の地などオーナー様の想いは様々ですので、その想いに沿った解決策が必要となります。そういったオーナー様の想いやご事情を受け止めたご提案をさせていただきますので、ぜひレッツまでお気軽にご相談ください。

※本記事は2016年6月号に掲載されたもので、2021年12月時点の法令等に則って改訂しています。

品川 有紗

三井不動産レジデンシャル株式会社

都市開発事業企画部

品川 有紗

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