老朽化不動産の処方箋【第3回】組み換え

諸条件を吟味して「資産の組み換え」を決断。相続対策にもメド

老朽化対策

今回の事例は、都内好立地で常に満室に近い賃貸マンションながら、築40年が経過したため賃料は相対的に低下、大規模修繕対策や耐震性についても不安があるという老朽物件です。オーナーのご意向を前提とした「3つの判断軸」をもとに、組み換えを決断されるまでの流れを詳しくご紹介します。

将来の売却を想定した所有不動産の留意事項

なお、資産の組み換えでご所有不動産を売却する際にはいくつかの留意点があります。まず、売却したい建築物の検査済証がない場合、特に大手の法人からは購入してもらえない可能性が高くなることです。また、検査済証がないと、買い手側はその購入資金として銀行から融資を受けられないため、価格を下げないと売却できないといったケースもあるため気をつけましょう。

なかには建替えを前提で老朽化不動産の購入を検討する不動産業者もいるため、将来の売却を想定して、既存入居者との契約更新や新規に空室を貸し出す際に「定期借家契約」を選択し、将来の建替えの際の立退きに伴う負担をあらかじめ軽減しておくのも売却をスムーズに進めるためのひとつの方法です。

老朽化した賃貸不動産の場合は減価償却も終わり、経費計上できずに節税効果が薄れてきています。そのような場合に、現在所有する物件の方が組み換えを検討している物件よりも賃料収入が高いからといって現状維持を良しとする判断は早計でしょう。仮に一定水準の賃料収入を今後も維持していけるとしても、老朽化によるその後の修繕費の増大に伴って確実に収支は悪化していきます。これに前述の減価償却終了による所得税の上昇も加味すれば、老朽化不動産をそのまま保有し続けるよりも、組み換えたほうが、収益面で有利になる場合もあるためです。

3つの判断軸をもとに最適プランをご提案

その後、A様はレッツの提案どおり都心の区分所有マンション3戸への組み換えを実施し、賃貸での運用をスタート。相続対策にひとつのめどがつき、将来への不安も解消されたようです。

本シリーズではこれまで3回にわたって「リファイニング建築」「建替え」「組み換え」という老朽化不動産の処方箋をご紹介してきましたが、多くのオーナー様を悩ませているのは、「どの対応策を選択すべきか?」という判断の難しさです。

レッツではマーケット調査や建物診断などを実施したうえで、まずは賃貸事業が成立するかどうかという「事業性能」を大前提に、投資額や事業期間、立退きリスクといった「事業特徴」、分割や納税、節税などの「相続対策」という3つの判断軸(図2参照)をもとに、オーナー様のご意向を踏まえてベストな対策をご提案します。老朽化不動産の問題で現在お悩みのオーナー様や、今後のために確かな備えを進めたいオーナー様は、ぜひレッツにご相談ください。

※本記事は2020年1月号に掲載されたもので、2021年12月時点の法令等に則って改訂しています。

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