「シャトレ信濃町」オーナー 木村達央様
悩んだ末に見つけた、自分にとっての最善策
「父から引き継いだ築50年の物件を、リファイニング建築で新築同然に再生できました。私自身が生まれ育った、この愛着ある建物を後世に残すことができ感慨深いです」
そう笑顔で語るのは、賃貸マンション「シャトレ信濃町」(東京都新宿区)のオーナー・木村達央様です。
木村様がシャトレ信濃町の改修を検討し始めたのは2012年。大地震の頻発を受けて、耐震性能を高めようと考えたのがきっかけでした。
はじめに、昔シャトレ信濃町を設計・施工した建設会社に相談したところ、開口部への鉄骨ブレース(筋交い)による補強を提案されましたが、眺望の悪化や利用できる建物面積の減少を伴うため断念。そこで建て替えを検討しましたが、建築当時から建築法規が変わっており、建物の規模を現状の9階建てから5階に縮小せざるを得ず、収益性が大幅に低下するため決断には至りませんでした。
数年経っても妙手が得られず悩んでいた矢先、木村様が本誌を通じて出合ったのがリファイニング建築です。「耐震性、デザインなどの使い勝手、収益性、工期など、私の希望がすべて叶うとピンときました」
さっそく青木茂建築工房とレッツに依頼し、調査・検討を経て2021年4月に着工、2022年5月に無事竣工を迎えました。
「その結果、耐震性能は新築物件同等まで向上しました」と木村様。袖壁や梁の補強によりブレースなしの見た目を損なわない耐震補強ができ、時代に合わせてデザインも一新できました。また、建築基準法上の緩和措置があるため従来の9階建てを維持。さらに、建て替えと比べて建築コストや工期上のメリットもあったことに加え、新築物件に近い水準で家賃設定ができました。「まさによいことずくめでした」と木村様は言います。
質のよいものを次世代に残したい
「シャトレ信濃町は約50年にわたり多くの方々に入居いただき、親しみを持ってもらったマンション。文化の成熟という意味でも、よい建物は壊さずに後世に残したいという思いがあったので、それが実現できたことも非常に嬉しく思っています」と木村様。また、躯体を残したことで、CO2排出量は建て替えと比べて約70%もの削減となっています。「質のよいものを残したい。その思いを、さらに環境に配慮しながら実現できる手法ですね」
よいものを残したいという姿勢は部屋の意匠にも反映されています。青木茂建築工房の提案で、旧シャトレ信濃町の塀の大理石を処分せずに、キッチンの壁の一部として再利用。デザイン的にもマッチしており、入居者からの評判もよいそうです。
また、建物を後世に残すにあたっては、時代に合った住環境を実現し、賃借人に喜ばれつつ長期的な経営ができる計画とすることも重要です。そこで、三井不動産グループのアドバイスで間取りの多様化を図りました。「以前は3LDKで1フロア3戸構成でしたが、調査したマーケットニーズに基づき、1LDK〜2LDK中心の1フロア5戸構成に変更しました」と木村様。その結果、住戸数の増加と空室リスクの低下により収益性が向上したといいます。
さらに、これを機に三井不動産レジデンシャルリースとサブリース契約を交わし、ご自身で行っていた賃貸業務を全面委託。「細部までサポートしていただき安心できます」
当初の要望がすべて満たせたうえ、多くのメリットも得られ、大満足という木村様。「マンションの老朽化対策は社会的課題。多くのオーナーさんにリファイニング建築をお勧めしたいです」と語ってくれました。