Step.1〈ご相談〉 耐震基準不適合でマンション住戸の半数以上が空室化
今回の事例のお客様は、都内N区に全28戸の賃貸マンションをご所有のA様。旧耐震基準で建てられたこのマンションはすでに築40年近くが経過し、少し前から空室が目立ち始めていました。
そんな折、緊急輸送道路沿いに立地していたことから、耐震助成金を受けて耐震診断を実施してみると、結果は不適合。耐震基準不適合は入居者募集時の重要説明事項であることから入居希望者は途絶え、マンションは半数以上が空室状態となりました。
この耐震補強と空室の問題への対応に迫られると同時に、将来的な観点から相続対策も前提にどのような施策を打つべきか悩まれていました。こうした課題への解決策を検討されているなか、A様はマンション再生に関するレッツセミナーをきっかけに、2014年7月にレッツへ相談をもちかけられたのです。
Step.2〈課題〉 売却したくないが建替えになるとコストが負担に―
当該地は駅徒歩5分という好立地で先祖代々受け継いできたこともあり、A様はできればこの地で賃貸事業を継続したいとご希望でした。
また、すでにご高齢であったことから、工事期間が長くなり、コスト負担も大きくなりがちな建替えも、最適解とは考えられませんでした。
そのためA様は、売却・組み換えでもなく建替えでもない、そして確かな相続対策にもなる第三の選択肢を模索されていたのです。
Step.3〈ご提案〉 リファイニング建築で資産価値を再生させる
こうしたご意向を受けて、レッツではリフォームやリノベーションとも異なる「リファイニング建築」のプランをご提案しました。この手法は、弱体化した構造躯体の耐震性能を軽量化や補強によって現行の耐震レベルまで向上させると同時に、意匠や用途の変更、設備の一新をおこない建築の長寿命化を図るものです。
レッツでは、リファイニング建築の第一人者である青木茂建築工房代表取締役の青木茂氏、さらに賃貸マンションの企画・運営・管理を担う三井不動産レジデンシャルリースと連携しながら、リファイニング建築によって老朽化した賃貸住宅を再生する事業計画の枠組みを組成しており、今回のプロジェクトは、まさにこのスキームが最適だと考えました。
リファイニング建築のメリットのひとつは、新築よりも環境負荷が少なく、低コストで建物を再生できることです。レッツでは、リファイニング建築によるマンションの改修費用を建替えの場合の約7割程度と試算。このコストで耐震補強できるうえ、デザインや住戸プランなども現在の市場ニーズに応じて変更できることから、改修後の賃貸事業でも十分な事業採算性が見込めると判断しました。
そしてリファイニング建築という手法は、もうひとつのテーマである相続対策という点でも最適解でした。築40年近い古い建物でありながら、青木茂建築工房と業務提携している金融機関から建物の残存法定耐用年数を超える30年の長期融資を受けられることで、まとまった額の借入金によって相続資産を効果的に圧縮できるためです。