レバレッジ効果を上手に利用する
より効率的に収益をあげたい場合、借入金を利用するのはひとつの手です。不動産投資は、投資対象に一定の担保力もあり、中長期の安定的な事業であるため借入金を活用しやすい投資形態です。銀行から融資を受けて不動産投資をおこなうと、少ない自己資金で不動産投資をおこなうことが可能となります。もちろん、借入金にはいくつかのデメリットはあります(図1参照)。それでも多くの不動産投資家は、例えキャッシュリッチの方であったとしても、借入金を上手に利用して不動産投資をしています。例えば一億円の不動産を購入する場合に、30%は自己資金、残りの70%を銀行から借りるようなイメージです。
ではなぜ自己資金に余裕があるのに、借入れをして投資するのでしょうか。その最大の理由は、借入金による「レバレッジ効果」を期待するためです。レバレッジ効果によって、全額自己資金で投資する場合より、収益効率があがることが多くあるのです。
もちろん、全ての不動産投資において借入金が有効なわけではありません。借入金が効果的なのは、そこに『プラス』のレバレッジ効果がある場合です。
効果を検証するポイント
レバレッジ効果は、全額自己資金(借入金なし)の場合のリターン(収益)と借入金コストの比較で判断します。その結果、全額自己資金の場合のリターンの方が多ければ、借入金を利用することで、自己資金に対する利回りが上昇しますので、『プラス』のレバレッジ効果があることになります(図2参照)。ちなみに、借入金を利用することによって自己資金利回りが下落してしまう場合は、『マイナス』、自己資金利回りが変わらない場合を『ニュートラル』のレバレッジといいます。これらの場合、借入金は有効な手段とは言えません。
レバレッジ効果が『プラス』の場合の具体例を挙げてみます。価格1億円で利回り6%の不動産に投資します。全額自己資金で投資した場合、自己資金1億円に対する利回りは6%です。これを、3千万円を自己資金、7千万円を借入れして投資することにします。借入金利が3%だとした場合、自己資金3千万円に対する利回りは13%となります(図3参照)。
借入れを利用することで、自己資金に対する収益率が大幅に上がります。このような場合は、借入れを多くすればするほど、自己資金利回りが上がるため、投資家は金融機関に対してなるべく多くの借入れを求めます。
活用する場合の留意点
では、なぜこのような方法が成り立つのでしょうか。株価の上昇や、景気動向に伴い都心の不動産価格は上昇傾向で市場に売り出されている物件の利回りもまだまだ低い水準です。ですが、現在の日本はまだまだ低金利が続いており、物件の利回りと金利のギャップが一定程度あります。このため現在の低金利であれば、借入金によるレバレッジを利かせて投資をするという方法が成り立つのです。
しかし、レバレッジ効果を求めて借入れをして投資することは、リスクを伴います。まずは金利上昇リスクです。その指標のひとつがLTV(Loan To Value)です。LTVとは不動産価格に対する借入金比率を示す指標ですが、LTVが高いと将来の金利変動を受けやすくなり、金利上昇に伴い返済額が上昇します。また、景気動向により賃料や不動産価格が下落した場合も、最悪の場合は売却しても元本が返済できない、という可能性もありますので、不動産と金利動向を注視しておく必要があります。
借入金を活用した不動産投資のメリットとデメリットを正しく把握して、上手に借入金によるレバレッジ効果を利用することで、より高い収益性を目指してはいかがでしょうか。
※本記事は2018年1月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。
三井不動産リアルティ株式会社 ソリューション事業本部コンサルティング営業一部
岡本 良保