人と街と共に ~三井ホームのプロジェクト紹介~

幅広く長期的な相続対策のために、2段階の法人化スキームを活用

相続対策

最初は相続税額の試算と節税対策が目的のご相談から始まりました。ご相談者は既に節税のためのアイデアもお持ちでしたが、レッツが検証したところ、その案では10年で対策前の水準に戻ってしまうことが判明。そこで、単なる一時的な節税ではなく、より長期的なスキームを構築し、法人化を活用することで、納税対策や分割対策、遺言信託の切り替えなども実現、様々な課題を含めた解決に繋げることができました。その概要をご紹介します。

Step.3〈ご提案〉 状況の変化に沿った2段階の法人化を提案

そこでレッツでは、積み上がっていくキャッシュへの対策として、①ご家族への暦年贈与や教育資金贈与と②法人化を提案。法人化の内容としては、新たに建築するマンションの管理型法人を設立し、そこに賃料収入が貯まる仕組みとして、提携する税理士法人とともに法人化の準備を進めることになりました。

近年、賃貸マンション建築に伴う法人化では、実態にそぐわない管理報酬の支払いが認められなくなったことを受けて、提携する税理士法人とともに法人化の相続対策の観点では管理型法人ではなく、所有型法人が推奨される傾向にあります。しかし、今回のケースでは建物をこれから発注する段階であり、所有型法人が建物を所有する場合には、建築に伴う借入金の借主も法人となってしまい、「借入による資産の圧縮」という本来の目的を実現できなくなります。そこで提案したのが「管理型法人」による法人化でした。土地・建物とも所有者が個人となる管理型法人であれば、借入金の借主はM様となり、相続税評価額の圧縮が可能になります。

また、役員をM様と奥様、ご長男、ご長女の4名とすることで、所得の分散を図りつつ、相続人の方々へ収益を分配できます。さらに、相続発生後は建物を法人に移転し、所有型法人に切り替えて個人から法人への現金移転効果をさらに高め、法人化のメリットを最大化するプランを提案しました。

Step.4〈解決〉 税負担軽減だけでなく分割や納税の対策にも

その後、駐車場跡地に賃貸マンションが完成し、管理型法人の活用により、10年後の相続税額も当初の状態からほぼ半減される見込みです。

また、すでに設定していた商事信託は信託報酬が高額だったため、信託報酬が不要で家族が当事者となる民事信託へと切り替えました。その際、M様を委託者兼受益者、管理型法人を受託者とすることで、M様の体調に不安がある場合でも、ほかのご家族が法人を通して相続対策を進められるとともに、信託報酬の名目でM様から法人へのさらなる資金移転を図るようにしました。

当初は節税対策として始まったプロジェクトでしたが、こうして法人化や民事信託を進める過程で、現金をどう残すか、そして、誰に何を残すか、といった納税対策や分割対策まで同時に実現でき、M様にも大変ご満足いただける結果となりました。

 

個別性の高い法人化スキームの活用には、経験豊富なプロの力を。

相続対策として注目される法人化ですが、M様のケースでは長期的な展望のもとで検討を重ねた結果、相続を境に管理型法人から所有型法人へ切り替えるスキームをご提案しました。しかし、特に相続対策の一環として法人化を活用するケースはそれぞれ極めて個別性が高く、どんな場合でも有効な法人化の手法があるわけではありません。

例えば、お金を法人に蓄えていくのか、あるいは個人に還元していくのか、そして、家族として資産をどう引き継いでいきたいか、といった細部まで吟味したうえで、適切な制度設計などが必要となります。また、場合によっては法人化にメリットがない可能性もありますので、ご検討にあたっては、ぜひ経験と知識の豊富なプロにご相談されることをおすすめします。

※本記事は2018年1月号に掲載されたもので、2021年12月時点の法令等に則って改訂しています。

小巻 佑輔

2006年に三井不動産に入社。中高層マンションの企画、開発、販売事業の経験等を経て、現職。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター

三井不動産(株)レッツ資産活用部

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